現代川柳は“自画像”
人物画っていっても「他人」を描くか、「自分」を描くかの二種類がある。
川柳は江戸時代に江戸で生まれた大衆文芸で、他人を詠むのは川柳の伝統的な方法。新聞が展開する時事川柳や、企業が募集する「○○川柳」は、この流れを汲んでいるんだ。デキない政治家を詠んだりね。
でも、僕がやっている現代川柳は、「自分」を詠む「自画像」。他人を笑うと面白いんだけど、僕はちょっと後味が悪い。それならば、自分を笑っちゃおうっていうのが、現代川柳の基本。
妻が来る味方を呼んだはずなのに
ええっ、気を利かしてくれたんだろうけどワイフはまずいよう、来る前から形勢不利を覚悟・・・ってね。そんなプチ苦境とか、ないですか?
人間感情のなかでも「怒・哀」を詠むとおもしろくなるから。ド・アイがコツよ。
自分という素材は24時間一緒にいる。「経験とは、平等に与えられた才能である」って言葉があるけど、それぞれ違った人生の面白さを抱えているじゃない?
まずは自分がどんな素材で、どんな料理になりえるのか。そんなことを考えるところから始めるのがいいですね。
本来川柳は、お題に沿って詠むものなんだけど、最初は難しいことは考えなくていいよ。
川柳の3大要素って?
だからまずは、自分のなかの“この気持ちを詠もう”を決めること。最近の「怒・哀」はなにかな? そして素材が決まったら、川柳の3大要素「ウガチ・カロミ・ワライ」に従って実作しましょう。
「穿ち」:物事や人心の核心にふれる
ゆうれいは皆俗名であらわれる
「きのう○○居士の幽霊が出てきてさあ」なんて言わないよね。じゃ戒名は葬式用か? ってこと。うまい角度を突いてくる。
「軽み」:軽やかで気がきいている
涙なんかどんどんビールで補充する
涙をビールで補充なんて。こういうフットワークの軽さが◎!
「笑い」:うれしさ、おかしさ、照れくささ、自分を笑い飛ばす
神様に玩具にされてうれしいな
ヤケもここまで来ると潔いでしょ。
この要素があると、平明にして深い川柳を詠むことができる。感情を詠むと言ったって、「哀しいよー!!」って叫ぶだけじゃ作品にならないでしょ。自分が主人公のドラマ台本を書く、というイメージかな。
「最大の謎はわたしの今の顔」。句の中に作者が棲んでいるんだ。それを第三者が読んで面白いと思えるかどうかが勝負ですね。
まずは、「下手でも何でもいいから、自分の見た物・事を自分の目と耳と心とことばで、川柳にしてみる」。僕の先生だった時実新子(ときざね しんこ)さんの教えです。
読む人より詠む人になりましょうよ! 次回は、実作をしながら、ルールやコツを学んでいきます。