2024年11月22日(金)

使えない上司・使えない部下

2020年1月18日

「東大卒の中小企業社長」? 特段の気負いなし

 「東大卒だから優遇」? そのようなものを感じたことはありませんが、高学歴の行員は仕事の目標に向けて邁進する力や集中力は総じて高いように思いました。金融に関する勉強にも熱心に取り組んでいましたね。特に事務処理能力が高いのです。

 東大卒は私を含め、子どもの頃からの環境は様々な意味で恵まれている人が多いのかもしれません。三和では、すべての行員が仕事の実績を残すための努力がめちゃくちゃくすごかった!必ず、この機会を生かすんだという意識がものすごく高い!

 行内では、「エリート採用」「ソルジャー(軍人)採用」とふざけて呼び合うこともありました。「ソルジャー採用」とは大学の体育会で大活躍をしたタイプで、新卒の採用選考では体力やその実績、人脈を買われ、内定を得たように見える人です。「どのような採用であるか」にかかわらず、入行数年もすると各自が力をつけ、それなりに差がついていきます。

 高学歴でも仕事ができない人は、たくさんいます。バリバリの体育会系でも、事務処理を含めてものすごくできる人もでてきます。スポーツのエリートも、東大に入学するのと同じく、相当にがんばらないとなれないでしょう。目標に向けて突き進む力や集中力は、勉強もスポーツも変わらないと思います。

 この頃、大手外資系の保険会社からヘッドハンティングを受けます。銀行に残り、キャリアを積んでいくよりも、自らの人生を自分で切り拓き、活躍できる道を歩みたいと考えるようになりました。銀行でがんばって出世を目指したり、20年後に融資先の企業などに出向したりして役員になるような道もあったのかもしれません。

 あの頃は20年先のことよりも、今、目の前にあるチャンスにかけたかったのです。明確な根拠もないのに、自分ならば必ずデキルという“謎の自信”があり、迷うことなく、27歳で転職をしました。銀行で表彰されたことも大きかったように思います。悔いは、今もありません。とてもよい銀行でしたが、自分の夢を追うために、いずれ、どこかのタイミングで転職したように思います。

 大手外資系の保険会社での仕事内容は生命保険のフルコミッションの営業でしたが、ある程度の自信がありました。多くの麻布や東大のOBの友人、知人には力を貸してもらいました。自らも契約してくれるだけでなく、多くの人を紹介してくれました。麻布OBは、大企業の社員や官僚、医師が多かったですね。「東大閥」? 私自身はそれ以前から学閥を意識したことはありませんが、麻布や東大卒のネットワークは強力です。みなさんのお蔭で、入社数年後には契約者数は十分に多くなりました。入社後2年ほどは、元旦以外は休まず働きました。2年後に、疲れて1週間程寝込んでしまいましたが、その後も全力で仕事をしました。

 2004年、31歳で結婚しましたが、妻の父(義父)が現在の会社(スリーエス)の創業者であり、オーナー社長でした。結婚直後から、義父から「うちの会社に来ないか」とお誘いを受けていました。生命保険の仕事がおもしろく、お客様を大切にしたかったこともあり、お断りをしていました。義父は、後継者がいないことに困っていたようでした。

 「家族の問題だし、これも縁」と心を変え、2006年に大手外資系の保険会社を退職し、スリーエスに入社しました。途中、「離婚する」というハプニングもありましたが、「元」義父となった先代から2012年にバトンタッチを受け、社長に就任しました。

 「東大卒の中小企業社長」? 時折、取引先の方から、「東大卒なのですね」と言われることがあります。私には特段の気負いはなく、毎回、「学歴、職歴はすべて幸運。幸運の連続で今の立場になったことに感謝しております」と答えています。東大に入るまでの家庭環境や受けてきた教育は大変に恵まれていました。違う環境に生まれ育っていたら、今の自分はないと思います。

 世の中は必ずしも環境に恵まれている人ばかりではありませんから、私としては弱い立場の人や、助けが必要な人への配慮を忘れないようにしたいと思っています。そのような考えもあり、人事の取り組みの課題のうち、「社員の待遇をよくする」ことを最優先にしています。昨年からは、新卒採用も始めました。2020年4月には、3人が入社予定です。新しく社会に出る若者に、よきチャンスを与えられる会社になれたらうれしく思います。家庭環境などが恵まれていなくとも、10代の頃の受験やスポーツで挫折があろうとも、何度でもやり直しができる社会が望ましい。スリーエスも、人々にチャンスを与えられる優しい会社でありたいと思います。

スリーエス
https://www.posi3s.com/

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。


新着記事

»もっと見る