フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長は、12月1日の委員長就任早々、12月7~8 日、最初のEU(欧州連合)域外の訪問先としてエチオピアと、そこに本部を置くAU(アフリカ連合)を訪問した。すぐ目に見えるような成果があったわけではないが、この訪問の象徴的意味合いは大きい。フォン・デア・ライエン新委員長は、EUとして「アフリカ総合戦略」の作成が必要だと述べた。おそらくEU=アフリカ大陸間のFTA(自由貿易協定)を推進することが念頭にあるのだろう。
欧州とアフリカの関係強化は、歓迎すべきことである。欧州による関係強化は、中国やロシアのアフリカ進出をバランスすることにもなる。日本も欧州の努力を支援すべきであり、日欧の経済援助協議等でアフリカ政策についても調整していくべきだろう。
アフリカは、開発途上の経済や政治の安定、治安等、数々の課題を抱えている。が、同時に、アフリカは、大きな潜在的可能性を併せ持つ大陸である。豊富な資源の他、若い人口やその増加、経済発展に伴う市場拡大がある。その重要性は、地理的に近く歴史的にも繋がりの深い欧州にとっては殊更大きい。経済、貿易の他に、域内移動や欧州への移民等の人口移動の重要性は、プラス、マイナス双方の意味がある。我々日本人にはやや実感し難いことかもしれない。人口移動はテロなど安全保障の問題にも関わる。アフリカは、これからもグローバリゼーションによる大きな影響を受けるだろうが、そのグローバリゼーションからアフリカが大きな利益を得てきたこと、そして今後も得ることは否定できない。
EUの中では、ドイツの他、フランスも新たな動きを見せているようだ。12月21日、フランスのマクロン大統領とコートジボワールのワタラ大統領は、西アフリカの8カ国が西アフリカ経済通貨同盟を通じて使用してきた共通通貨CFAフラン(1945年発足)を終了させ、新たな共通通貨ECO(エコ)に移行することで合意した。CFAフランは通貨としては安定性が評価されてきたようだが、旧宗主国フランスの植民地支配の名残として批判されていた。新通貨ECOは引き続き通貨ユーロに固定されるが、外貨準備の50%をフランス国庫に預けるとの従来の条項は撤廃される。
欧州は従来からアフリカ・カリブ海・太平洋諸国(ACP諸国)との間で特恵貿易と開発援助等について一般協定を結んできた。ロメ協定を代替した現在のコトヌー協定(2000年6月にACP79か国とEU加盟15か国がベナンのコトヌーで署名)は2020年3月1日に失効する。新協定交渉は2018年9月に開始されたが、多様な地域を対象とするため、交渉や実施はなかなか複雑で困難なようだ。
日本は1990年代以降、TICAD(アフリカ開発国際会議)の開催などを通じて、アフリカとの関係強化に努めてきた。今やODA(政府開発援助) に加えて、民間投資の増大に力点を置いている。他方、日本とアフリカとの貿易については大きな進展はないように見える。特恵関税制度等を含め、今一度貿易についても検討すべきではないだろうか。
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