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2020年5月23日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

1962年東京生まれ。1987年早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年3月末で退社、独立。現在、経済政策を中心に政・財・官を幅広く取材、各種メディアに執筆するほか、講演やテレビ出演、勉強会の主宰など幅広く活躍している。オフィシャルHP(http://isoyamatomoyuki.com/)

著書に『2022年、「働き方」はこうなる』(PHPビジネス新書)、『理と情の狭間 大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP)、『国際会計基準戦争 完結編』(日系BP)、『ブランド王国スイスの秘密』(日経BP)など。共著に『オリンパス症候群 自壊する「日本型」株式会社』(平凡社)、『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。

早稲田大学政治経済学術院(大学院)非常勤講師、上智大学非常勤講師。ボーイスカウト日本連盟理事。静岡県ふじのくにづくりリーディングアドバイザーも務める。

日経ビジネスオンライン(日経BP)、現代ビジネス(講談社)、フォーサイト(新潮社)、月刊 WEDGE(ウェッジ)、月刊 エルネオス(エルネオス出版)、フジサンケイビジネスアイ(産経新聞社)などに連載コラムなどを持ち、定期執筆している。

成熟市場での生き残り策

 木樽醤油に力を入れてきたのには、もうひとつ大きな理由があった。小手川社長は語る。

【小手川強二(こてがわ・きょうじ)】  
1953年生まれ。東京大学経済学部卒。75年日本開発銀行入社。84年にフンドーキン醬油に入社。86年に社長就任。同社の創業は文久元年(1861年)。 ​
写真、左後ろが、世界一の「木樽」。

 「1986年に社長を引き継いだ時、製品価格を安くすると売れるが売上高の額は増えず利益はむしろ減る。しっかり価格を守ろうとすると量が減り、売り上げも利益も減る。成熟マーケットでどう生きていくかという大きな課題に直面したのです」

 そこで調べてみて気がついたのは、醤油の年間消費量が77年の1人10リットルをピークに6.5リットル程度まで減っていたこと。食の洋風化や外食・加工品・惣菜などの普及で、家庭で醤油を使うことが少なくなっていったのだ。ちなみに今では2リットル程度となっている。

 そんな中で、スーパー全盛時代を迎え、醤油はセールの目玉商材になった。1リットルペットボトル入りが199円といった価格で売られた。「もはや成熟マーケットどころか縮小する市場で価格競争すれば、自分で自分の首を絞める」。小手川社長は量を追求するのではなく、高付加価値化に舵(かじ)を切ることを決断したのだ。

 創業以来の商品である醤油や味噌(みそ)は「グレードアップ」して価格を上げても売れる商品を作る一方で、ドレッシングなどの加工品を増やす。その醤油のグレードアップの切り札が木樽醤油だったわけだ。

臼杵料理が食べられ、フンドーキンの製品も売る小手川商店

 「世界一木樽醤油」の小売販売予定価格は280ミリリットルで、1000円を超す。1リットルに換算すれば3500円以上。ウイスキー並みの価格である。量より質を求める世の中の流れに乗り、それでも売り切れる。お手頃の「八本木樽醤油」も720ミリリットルで1080円だ。 

 もうひとつ、付加価値を付ける方法として力を入れたのが、醤油をベースにした加工品。「しょうゆドレッシング」の開発に早くから着手、「ごまドレッシング」が販売中止を余儀なくされるほど売れた。

 小手川さんが社長に就任した時、醤油・味噌の売上高が60億円、加工品は5億円だったが、今は醤油・味噌が70億円、加工品は90億円に拡大。九州一の醤油味噌醸造会社に成長した。マーケットが縮小する中でも、醤油味噌の売り上げを伸ばしてきた。

 今や全国に販路を広げたが、それぞれの地域で受け入れられるための工夫もしている。醤油の味だけで70~80種、味噌は50種の地域に合わせた味に仕上げている。

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