地元大学とハラール醤油を開発
量は追わないといっても少子高齢化が進む中、人口が減る国内市場だけに依存していては、いずれ価格競争に巻き込まれることになりかねない。そこで、次は海外に打ってでることを決めた。
もちろん、そのためにはその地域に合わせた商品開発も不可欠だ。大分県別府にある立命館アジア太平洋大学(APU)と共同研究し、イスラム教の戒律に沿ったハラール対応の醤油を開発した。
イスラム教徒が多いインドネシアをはじめとして、APUに在籍する異なる7カ国の学生に意見を聞き、アルコールを添加しない他、イスラム教の聖典に生薬として登場する「はちみつ」を使用して、甘口の「ハラールはちみつ醤油」を生み出した。マレーシアの食品メーカーと組み、今年からASEAN(東南アジア諸国連合)市場の開拓に乗り出す。
臼杵の中心街から橋を渡った川の中州にある本社は、木造平屋建ての味わい深い建物だ。隣に広がる近代的な加工工場とは対照的で、伝統を重んじ木にこだわる社風をうかがわせる。
そんな建物の中にある応接室には小説家として99歳まで活躍、85年に亡くなった野上弥生子の言葉を記した額が掲げられている。実は、野上はフンドーキン醤油の創業家である小手川家の生まれで、臼杵の中心街には生家の酒蔵が残り、「野上弥生子文学記念館」として公開されている。
額は野上の言葉を書家に書かせたものだが、そこにはこうある。
「お味噌の味はよいの
お給料は満足するように
なっていますか
銀行の借入はへりましたか」
実家の家業を気遣う言葉だが、そこに小手川社長は経営哲学を感じ、肝に銘じるかのように「家訓」とし応接室に掲げているのだ。
よい商品を作り、従業員を満足させ、経営を健全化する─。
ともすると、価格競争に勝ち抜くために、コスト第一で製品の品質を犠牲にし、少しでも安い給与で働かせる。そんな、陥りがちな「最終利益第一主義」に疑問を感じ、自らを戒めているのだ。
高付加価値な商品に力を入れて「稼ぐ経営」は、少しでも従業員の給与を上げ、満足度を高めることが大きな狙いでもある。
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