使えない上司・使えない部下

2020年2月27日

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 今回は社会保険労務士で、企業の人事・労務コンサルティング業のシェアードバリュー・コーポレーション(SVC)代表取締役の小林秀司さん(60歳)にお話を伺った。

 小林さんは大学卒業後、大手社会人教育支援会社でキャリア開発事業などに関わった。1997年に社会保険労務士として独立し、SVCを設立した。2009年4 月より法政大学大学院政策創造研究科(修士課程)の坂本光司研究室で、従業員を大切にする人本経営を専攻した。現在も、全国の企業の視察やヒアリングなどを繰り返す。小林さんにとって、「使えない上司・部下」とは…。

(anamad/gettyimages)

部下の違いや個性を認め、尊重する

 「使える、使えない」といった言葉を私は使わないし、周囲でもほとんど聞きません。企業でのコンサルティングの経験をもとに言えば、このような言葉が交わされる会社や職場は社員が互いに尊重し合う風土ではないように思います。たとえば、仕事上で問題があった時に自分の行動を振り返るより先に、相手や周囲を責める傾向があるのではないでしょうか。つまりは、他責の風土です。

小林秀司さん

 最近は、「心理的安全性」のある職場をつくっていくことが人事・労務の分野では重要なキーワードになっています。従業員が安心して、意見や考えを遠慮なく発言し、行動に移したりできることなどを意味します。この動きが広がりつつあるのを踏まえると、「使える、使えない」という言葉が交わされている会社は時代の流れについていくことができていない、と言えるのではないかと思います。

 実は、私も大手社会人教育支援会社に勤務している時、部下として2度と仕えたくない上司がいました。あの方のことを今も「使えない上司」とは思っていませんが、当時はもういい…と感じてしまったのです。私が20代半ばの一般職の頃で、上司は30代の課長の男性。部署は、部員が約20人。

 部下たちがこの方に、新規事業の提案をするとそのほとんどをまともには受け付けません。いつまでも回答はなく、真剣に検討もしていないようでした。ところが、部下のミスを見つけるとすかさず指摘し、注意したり、叱ることには燃える…(苦笑)。しかも重箱の隅を楊枝でほじくるようなものでしかなく、私には理解ができませんでした。

 口ぐせが、「余計なことをするな!」「(俺はそんなこと)知らんがな」。つまりは、ことなかれの現状維持なのでしょうね。私は新規事業をどんどんと進めていきたいタイプでしたから、心の中で上司の姿勢を「違うだろう」と頻繁に思っていました。その後、この方が人事異動となり、男性の部長が私たち約20人の直属上司となりました。

 2人の部署や部下の動かし方は、まったく違いました。たとえば、新たな上司はそれぞれの部員の特徴や特性を見極めて、最も仕事がしやすいように任せるのです。私は前の上司(課長)の時に前進しようとしても「余計なことをするな!」と抑えつけられていたので、やる気が湧いてきて、熱心に仕事に取り組みました。

 口グセが、「よろしくたのんます」「(部下が仕事を)よくやっているよな」。部下の心をつかむのが、うまいのです。部下の個性を認め、尊重しているからこそ、適切なタイミングで効果的な言葉をかけることができるのでしょうね。個々の部下の承認の欲求を十分に満たしていくのです。みんなの仕事への姿勢が変わり、部署の業績は早いうちにV字型改革をしました。その後、部長は役員になり、活躍しました。

 なぜ、2人の管理職のマネジメントは驚くほどに異なっていたのか…。当時は、この会社は「管理職とはこうあるべき」とは厳格には定めていなかったようです。ベンチャー企業として発展してきた会社でした。おそらく、社員たちの起業家精神を生かすためにもマネジメントなども含め、あえて柔軟にしていたのではないかなと思います。

 私は部長の下で課長になり、部下をはじめて持つようになりました。「使えない部下」と思ったことはありませんが、ソリが合わない部下がいました。部長から、「とんがっている奴で、周りとうまくいかない。(部下として)面倒をみてやってくれないか」と頼まれ、受け入れました。

 確かに他の社員に比べると協調性がなく、摩擦が絶えない状況でした。それが尋常ではないといったレベルで、自分の考えが正しいと常に主張し、他人のほとんどの考えや意見を突っぱねるのです。結局、チームの一員として仕事をすることはやめて、彼の専門性を生かした仕事を任せるようにしました。彼もその後、独立していきました。

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