2024年12月8日(日)

使えない上司・使えない部下

2019年12月19日

 今回は、求人広告事業、人材紹介事業、採用ブランディング事業などを手掛ける、プレシャスパートナーズ(本社、新宿区、95人)の管理本部人事部長の中川 梓さんに取材を試みた。

 2011年に中途採用試験を経て入社し、営業職として経験を積み、13年に人事部へ異動し、15年に現職となった。部下は現在、4人(うち、人事2人、総務2人)。主に新卒や中途の採用試験を企画立案し、実施する一方、管理職や一般職の研修を行う。最近は、パワーハラスメント研修や人材教育に力を注ぐ。部下への指導、育成にも熱心に取り組む。特に「業務の遂行と本人の成長が表裏一体であることを意識し、指導する」ことを大切にしている。

(NanoStockk/gettyimages)

解決するまで共に走る姿勢を持つこと

 「使える、使えない」といった言葉を私が職場で使うことはないし、聞くこともありません。上司(社長)からは管理職会議で「部下がいるから、皆さんは上司であることを忘れないように」「部下を責めるのではなく、まずは自分を顧みるように」とよく言われます。かつての上司(現在、大阪支社長)から「お前のミスは、俺のミスだ」と言われた言葉も心に刺さりました。

 私は、「部下は上司の道具ではない。弊社に入社し、個々の部署に配属されて、私とたまたま仕事をしているのでしかない」と受け止めています。それを意識し、部下(現在、4人)と日々接してきました。

 私は2015年に人事部長となりましたが、それ以前のチーフ(課長)の頃から、部下への指導には自分なりに気をつけ、力を入れてきたつもりです。最近、「指導」と「パワーハラスメント(以降、パワハラ)」の区別が難しくなっています。そのようなトラブルを未然に防ぐためにも弊社の役員、管理職全員が外部のコンサルタントなどの協力を得てパワハラ研修を早くから受けて学習をしてきました。

 パワハラの定義(※)は、厚生労働省である程度明確になっています。少なくとも、そこで決まっていることは会社として守る必要があります。そのうえで個々の管理職は部下への指示の仕方にも注意をしないと、「パワハラ」と指摘されかねないようになるのでないかな、と思う場合があるのです。

 たとえば、仕事をするように指示をしたものの、目的を伝えないとか、解決策が見当たらないようなことをさせる場合も、部下からすると困るのではないかと思います。「~できないとダメじゃん!」と言っただけで、どこがどのようにいけないのか、どのようにすれば解決するのかと具体的に踏み込んでわかりやすく伝えないのも「指導」とは言えないし、「パワハラ」と受け止められかねないと思うのです。

 私も前職の頃、上司から目的がわからない仕事をするように指示をされ、確認したかったのですが、なかなか言えなかった経験があります。あのような状態が続くと、今なら「パワハラ」と思われることもありうるのでないでしょうか。少なくともそこまで考え、指導をする時代になっていると考えています。ですから、私も今、部下に個々の仕事の目的は念入りに伝え、質問をすることで理解を深めてもらおうとしているのです。

 あるいは、「(部下への)愛情があれば(必要以上に)厳しくしてもいい」といった時代でもないと思います。愛情はもちろん必要ですが、何を言ってもいいわけではないし、どのような指示、指導をしても許されるわけでもないはずです。一方で、厳しく言ったことが即、パワハラとなるならば疑問を感じます。状況いかんでは、少々厳しく注意指導などをせざるを得ない場合がありうると思うのです。業務上、必要であり、部下の成長につながるならば、言うべき時はあるのではないでしょうか。

 大切なのは、上司は部下と一緒に仕事の問題点や課題を考え、解決するまで共に走る姿勢を持つことだと思います。私のケースで言えば、「なぜ、こうなったんだろう」「どうしたらいいんだろう」と何度も尋ねて、部下と考えるのです。私なりに回答はあるのですが、はじめから押し付けることはしません。解決策を一緒に導き、本人がそれをもとに新たな方法でトライし、上司が途中経過や結果まで確認してこそ、「指導」と呼ぶことができるのだろうと思います。この確認が、最も大切なのです。ここまでしないと、部下が早いうちに成長することは難しいのではないでしょうか。


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