2024年7月18日(木)

佐藤忠男の映画人国記

2012年6月8日

 大都会にはまた隣人の素性も分からないといった面もある。その不気味さを鮮やかに描いた「誰も知らない」(2004年)の是枝裕和は文京区の出身。やはり大都市の迷宮のような謎めいたあり方を描いた「燃えつきた地図」(1968年)の勅使河原宏(1927~2001年)は千代田区の出身である。生け花の草月流の御曹司だったので難しい前衛映画やぜいたくな芸術映画を観客の組織動員で作ることができた。

 千代田区出身には石井輝男(1924~2005年)もいる。才能のある人だったと思うが潰れる前の新東宝で監督になり、当時そこでは低予算のゲテモノしか作れなかったので、新東宝を出ても愛欲ものや怪奇ものなどゲテモノの巨匠と見られてその種の映画のマニアには尊敬された。

 犬童一心は「ジョゼと虎と魚たち」(2003年)など、ウブな青春を描くと上手い。

 アニメーションの一方の旗頭である押井守は大田区の出身。「うる星やつら」をはじめウイットに富んだ作風に特色がある。

 金子修介は渋谷区初台の出身。青春ものから怪獣ものまで,幅広く堅実なエンターテインメント作品で定評がある。

 天願大介も渋谷生まれ。さっそうとした武道映画「AIKI」(2002年)が素晴らしく、父の今村昌平の「楢山節考」の後日譚とも言うべき「でんでろ」(2011年)も痛快なアクション映画だ。

 大田区出身者には長谷部安春(1932~2009年)もいる。日活アクション華やかなりし頃にその一角を担った人である。今年日活創立百年で外国でも日活映画の回顧上映があるが、なかでは彼の作品が評判がいい。


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