2024年4月18日(木)

VALUE MAKER

2020年5月24日

 東京・芝にある正傳寺。庫裏を改装した宿坊は、6人まで宿泊できる部屋が2つあり、シェアウィングがスタッフを常駐させずに遠隔管理している。住職の田村完治さんは「都心なので、単に収入だけを考えれば、事務所として貸した方が効率的。ですが、仏教に触れる経験を持ってもらうことがお寺として大事だと考えお願いしました」と語る。

正傳寺(写真=湯澤毅)

 人口が減っていない都会の寺院も決して経営が楽なわけではない。正傳寺の墓地も空き地が目立つ。「家制度が壊れ檀家さんが減っているのは都会も同じ」だと田村住職は言う。

 「お寺ステイ」では、宿泊者の要望があれば、写経やお守り作りなどを体験できる。また、朝夕のお勤めに体験参加することができるお寺もある。

 もともと奈央子さんは、大使館の仕事もしていて、外国人をお寺に連れて行くと大感激されることを知っていた。イベントを開催する場所としてお寺の本堂を活用することなども企画・プロデュースする。

 「お寺とのビジネスは、何よりもまず信頼を得るのが大変です。一度信頼を得ると、他のお寺を紹介してくださるなど、ネットワークが広がっていきます」と真衣さん。群馬県・桐生の観音院ともつながった。地域の観光拠点として様々な人に来てほしい、というのが「お寺ステイ」を始める動機になった。19年の10月にオープンした。

 2人が今、熱い視線を注ぐのが山梨県の身延山。端場坊(はばのぼう)という塔頭(たっちゅう)寺院と契約しているが、日蓮宗の総本山である身延山久遠寺(くおんじ)には数多くの宿坊があり、1000人以上が宿泊できる。かつてのように団体参拝客が絶えなかった時代のような賑わいは減ってきている。「コンベンションやテレワークなどを行う場として認知されれば、外国人や若い日本人にもうけるのではないか」と真衣さんは夢を膨らませる。

「寺ワーク」という働き方

 今、力を入れようとしているのが「寺ワーク」。お寺を拠点にリモートワークすることを提案しているのだ。集中して働き、心を整え、地域を知って、地域性を楽しむには、お寺がぴったり、というわけだ。

 シェアウィングのスタッフは総勢16人ほど。多くが常勤ではなく、それぞれが業務を分担する、まさに「シェア」して働くスタイルだ。不思議な「人のご縁」で僧籍を持つ若手が社員として加わったり、宿泊業の専門家が加わるなど、「チーム」が大きく広がっている。

 シェアリング・エコノミーを追求する女性経営者の2人が、資本主義経済の「外」にいるとも言える「お寺」に魅力を感じているのも、これまでと違った仕組みが価値を生み出す時代の到来を意味しているのかもしれない。

  
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◆Wedge2020年5月号より

 


 
 
 
 
 
 
 

 

 

 
 


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