2024年4月23日(火)

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2020年5月24日

飛騨高山との出会い

 そんなある日、「人のご縁」が「お寺ステイ」が動き出すきっかけになった。全日本空輸(ANA)の専務を務めた野村紘一さんが退職後にボランティアで始めた女性経営者の勉強会に参加したところ、野村さんの故郷、岐阜県・飛騨高山でやってみたらどうだ、という話になったのだ。さらに高山で不動産業を営む長瀬栄二郎・健栄住宅商事社長まで紹介された。

 長瀬さんの紹介で、高山に視察に行った2人は飛騨高山に惚(ほ)れ込む。日本ならではの街並みが整い、自然環境も素晴らしい。欧米人を中心とする外国人観光客に大人気になっていた理由が分かった感じがした。「すごく良い『気』をもらって何かやりたいと直感で感じた」と真衣さんは振り返る。

 視察ではなかなか良い話には巡り合わなかった。焦った真衣さんがネットで調べて高山善光寺というお寺の宿坊に泊まることにした。電話をかけると満室だという。宣伝もしていないのに口コミで外国人にも大人気だった。

高山善光寺(写真=Fabien)

 いつならば予約できるか聞いたところ、予想外の答えが返ってきた。「今年いっぱいで閉めるので」。あと数カ月の話だった。住職に連絡が取りたいと言うと、もう住職はおらず東京在住の娘さんが管理している、という。連絡をとり2人は娘さんに会い「私たちに宿坊を任せてください」と直談判した。

 老朽化が激しかった宿坊の大改修に乗り出した。シェアウィングとしても資金をつぎ込み、勝負をかけた。水回りを全面的に新しくして、外国人が快適に過ごせる宿泊施設として一新した。コンセプトは「Less is more(より少ないことは、より豊かなこと)」。知的な仕事をしているフランス人の40歳代男性を想定上の顧客対象モデルとした。実際には少し若い日本滞在歴が長い写真家のFabien(ファビエン)さんに意見を聞いた。

高山善光寺の「花見の間」(写真=Fabien)

 17年9月にオープン。1泊1部屋2万~3万円、ひとりあたり1万円を目安に料金設定した。外国人に分かりやすいように「Temple Hotel」という名称を使う。古い宿坊の時とは比べものにならない高値だが、それでも人気は爆発した。

写真左:スタイリッシュにデザインされた「お寺ステイ」の札
写真右:左から新弘行さん(シェアウィング)、雲林院さん、田村さん、佐藤さん、長瀬さん
(写真=湯澤毅)

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