2022年6月27日(月)

安保激変

2012年6月15日

»著者プロフィール
著者
閉じる

小谷哲男 (こたに・てつお)

明海大学外国語学部教授

日本国際問題研究所主任研究員を兼任。専門は日本の外交・安全保障、日米同盟、インド太平洋の国際関係。主な共著に『アジアの国際関係―移行期の地域秩序』(春風社)など。
 

 01年3月には、海南島近くの南シナ海上空で中国の戦闘機がアメリカの偵察機に衝突する事案があった。この衝突で中国側のパイロットは行方不明となり、アメリカの偵察機は海南島への不時着を余儀なくされた。不時着した兵士の返還をアメリカ政府が要求すると、中国政府はEEZの上空でアメリカが情報収集活動を行ったことを非難し、謝罪を求めた。アメリカは他国のEEZ及びその上空であっても、外国軍が情報収集をすることは自由であるというのが一般的な国連海洋法条約の解釈であると反論したが、中国はアメリカが批准もしていない条約に基づいて自らの立場を正当化していると批判した。

EEZにおける外国軍の活動を禁止する中国

 中国がミサイルや潜水艦を駆使してアメリカの接近を阻止しようとしていることは、日本のメディアでも広く伝えられるようになった。けれども、中国が法律の恣意的解釈を接近阻止戦略に取り入れていることはまだあまり知られていない。

 中国の法律戦の基本は、自らのEEZを広げる一方で他国のEEZを否定し、EEZにおける外国軍の活動を禁止することである。このため、中国はEEZの基点となる尖閣諸島や西沙・南沙諸島の領有権を主張し、EEZの拡大を目指している。一方、中国が日本最南端の沖ノ鳥島を島ではなく岩だと主張しているのは、島であればそれを基点にEEZを宣言できるが、岩であればEEZが認められないからである。

 アメリカでは中国が法律による戦争を仕掛けてきているという認識が広がり、オバマ政権がアジア重視姿勢を貫くためには、この法律戦に対抗しなければならないと考えられるようになった。そのためには、アメリカが国連海洋法条約に加盟し、その本来の解釈を守らなければならないのである。

アジアの多くの国が中国と近い解釈

 法律戦の難しいところは、アジアの多くの国が中国に近い海洋法の解釈をしていることである。中国の強硬な南シナ海への進出に対しては、ベトナムやフィリピンを始め東アジアの国々がアメリカの後ろ盾を期待している。これに対してアメリカは国際法に基づいた平和的な解決を当事者に求めている。

 しかし、沿岸国に有利な海洋法の解釈、とりわけEEZにおける外国軍の活動が規制されるべきだという立場は中国だけのものではなく、インド、マレーシア、ミャンマーなどアジアの多くの国によって共有されている。このような海洋の自由を脅かしかねない解釈が広がることを防ぐためにも、また自らの主張の正統性を高めるためにもオバマ政権は国連海洋法条約への加盟を求めているのである。

→次ページ 海洋法制定を主導したのはアメリカとソ連

関連記事

新着記事

»もっと見る