2024年11月22日(金)

中国はいま某国で

2012年7月9日

タジク、中国に農地を大規模貸与

 パイプラインと交通インフラはみな中国・新疆ウイグル自治区へ伸びる計画だ。連れてイスラム主義過激派やウイグル独立派が中国に入り込むのを避けるにも、北京はタジキスタンの内政に発言権を持っておきたいだろう。

 現実はその向きへ進み、順調であるかに見える。タジキスタンはこれまでどの隣国もあえてしなかった策を中国に対し立て続けにとったからだ。

 ひとつは領土の一方的割譲である。タジキスタンはその東部一円、中国と接する地方で、中国との間に帝政ロシアの時代以来長らく領土紛争を抱えてきた。それが11年初め、タジキスタン側から中国に1100平方キロメートル余りを譲渡して決着をつけた。

 国家間に滅多に起きない珍しい譲歩だ。沖縄本島にやや欠けるほどの面積は中国が主張してきた領土の1%に過ぎず、これで収めたのはタジク外交の勝利と同国政権は言う。だとしても中国の圧力を受け入れた事実は残る。

 加えて12年に入ると、タジキスタンは中国に対し6000ヘクタールの農地を貸し出す意向であることが判った。本欄は以前、カザフスタンが同様にしようとして国内の反発を買い立ち消えになったことを報じた(11年9月号)。タジキスタンではそれが実現する。

 問題の面積は、東京の都心3区と新宿区を合わせた規模に匹敵する。これを一括・一カ所で貸すのではなく、何カ所かずつ貸与する。報道によれば、600ヘクタール超の土地を貸すことが既に決まった(契約条件の細部は未詳)。

 中国側は、200万ドル相当の投資や技術援助を実施するとか(タジキスタン専門家マーク・ビンソンの説)。邦貨にして1平方メートル当たり2円60銭くらいで借地権を買った計算になる。

 主に綿花を育て、売り上げはタジキスタンに入る。荒廃地の回復にもなると同国政府は言うのだが、さて。

[連載]中国はいま某国で
[特集] 習近平と中国 そして今後の日中関係は?

◆WEDGE2012年7月号より

 

 

 

 

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