2024年12月7日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年6月8日

 Foreign Policyのウェブサイト5月17日付で、Karl Eikenberry元駐アフガニスタン米大使が、台湾情勢は安定しているが、対台湾武器輸出、台湾自身の防衛努力、米国要人の訪台の制限など、改善すべき面は多々あり、現状に満足して台湾問題を放置してはならない、と言っています。

 すなわち、米国の台湾政策は成功してきた。台湾は世界第18位の経済規模を誇り、独裁から民主主義へ、そして、貧困から繁栄へ変貌を遂げることができた世界でも稀な例だ。

 また、台湾への武器売却は段階的に縮小し、いずれ台湾を完全に放棄すべきだという主張は、既に様々な論評で十分否定されており、これが米国の政策になることはないだろう。しかし、米国がアジア太平洋で既存のパートナーシップを強化しなければならないこの時に、今のような腰の定まらない対台湾政策をとっていたのでは、周辺諸国は不安を抱いてしまう。

 米国は、先ず、対台湾武器輸出の制度をもっと単純透明にすべきだ。台湾の議会が予算を手当てしても実際に武器を買えるかどうかわからない、あるいは、米国が供与を決定してもいつそれが実現するのかわからない、というような状況は改善されなければならない。他方、台湾にはもっと自主防衛努力をするように要求すべきだ。さらに、アジア太平洋の安定は少なからず台湾にかかっており、そうした台湾との軍事交流や高官の相互訪問が抑制されている状況も改善されなければならない。

 中国本土との「問題の決着」に重点が移る中、米台は互いに相手を当然視して、気を緩めてしまう危険性があるが、今秋の中国共産党の指導部交代の前後は、中国が内向き、かつ、リスクを嫌うようになると予想されるので、ここしばらくは米台関係を改善する絶好の機会だ、と言っています。

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 たしかに、国民党政権が成立し、米国は、これで台湾が独立を宣言して中国と戦争になり、米国がそれに巻き込まれる心配はなくなったと安心して、台湾問題を閑却してきた感があります。これは、民主主義の台湾では政権交代があり得ることを考えれば、本来一時的な安心でしかないのですが、米国内では、中台関係は将来の統一路線に乗ったと考えて、それに長期的な望みを託す論調があります。


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