NBR5月7日付で、Steven Goldstein米スミス大学教授が、1月の選挙で馬英九が勝利を収めたにもかかわらず、台湾では、馬の対中政策や経済政策について人々の不満が高まっており、今後の中台関係について不安定性を排除できない、と言っています。
すなわち、馬が選挙で勝って、中国も米国も内心ほっとしたにちがいない。民進党が勝てば、ここ4年間の中台間の安定は後退を余儀なくされると見ていたからだ。
この4年間、馬政権は中台間の課題として、比較的扱いやすい経済や人的往来に取り組み、統一問題については、「統一せず、独立せず、戦わず」の現状維持策をとって、政治問題は避けてきた。
中国としては、馬政権2期目には、中台で扱う議題を政治、軍事問題にまで拡大したいだろうが、今のところは露骨に圧力をかけることを控えている。ただ、1990年の民主化の結果、台湾政治は予測不能なものになったことは忘れていない。また、台湾問題では、時は自分たちの味方だとの自信は持っていないようだ、つまり、中国は、両岸関係の安定が続けば、台湾は再統一を促されるよりも、むしろ自信を深め、本土とは異なる独自の存在だという意識を強めるのではないかと心配している。
一方、台湾では、選挙で勝ったにもかかわらず、馬の政策の方向性について人々の不満が高まっている。各種世論調査でも、馬の支持率は20-30%まで落ちており、その原因として、対中国政策の不透明性、物価上昇をめぐる国内経済政策の説明不足が挙げられている。
さらに、これまで非妥協的姿勢をとってきた野党民進党が、対中国政策の再検討を行っている。将来、民進党がより穏健な対中政策をとるようになれば、選挙民の反応も変わってくるかもしれない。中国もそうした事態をある程度予想して、民進党の政治家を取り込むことを考えている。
それに、中国は権力の交代期を迎えて国内政治が不安定化する可能性があり、さらに、種々の外交問題にも対処しなければならないので、台湾問題が加わることは避けたいだろうから、当面、現状維持が続くことに中国も異論はないだろう。
ただ、中国から見て、台湾が統一に向かわないどころか、台湾の主権を強調する方向に向かっていると思えた時は、中国の忍耐も限界が来るかもしれない。いずれにしても、中台は将来についてそれぞれ非常に異なる願望を抱いている上に、互いに猜疑心を捨てられない。そうである以上、両者の関係には常にリスクが潜んでいると見なければならない、と言っています。
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今日台湾が抱える問題点および中台関係をバランスよく的確に整理したものです、特に、中国が台湾問題の将来について、「時は自分たちの味方だとの自信を持っていないように思える」という指摘は、その通りだと思われます。「台湾はいずれ統一の方向に向かうと楽観している」、と中国系の学者の多くは自信ありげに話していますが、そこには多分に政治的意図が感じられます。