Wedge REPORT

2020年7月11日

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 コロナ禍で、多くの店舗が休業や営業時間の短縮を迫れたことで売上の減少を強いられるなかで、堅調なのが洋菓子店だ。ホテルやデパートに入居する店舗だと休業となったところも少なくないが、郊外の店舗型洋菓子店は、客足が絶えることがない。というのも、巣ごもりのなかで、「スイーツはちょっと豪華に」「甘いものを食べてストレス解消」といった理由などから需要が増えているという。そんな中で今年の母の日(5月10日)では、過去最高の売上を記録した店舗もあったという。

 

 食品業界に特化した人材紹介事業を手がけるドリームラボ(大阪市北区)は、2015年から「パティシエ(洋菓子職人)」向けの求人サイト「PATISSIENT(パティシエント)」を立ち上げた。そもそもパティシエの就職は「専門学校に張り出される求人票を見て応募する」「実際に洋菓子店を回り自分で就職先を探す」ことが大半を占めてきたという。ところがコロナ禍によってパティシエを養成する専門学校が休校になるなどして「求人を出したくても出す場所がない」といった洋菓子店の声を聞いて、5月から「パティシエント」のサイトに無料で求人を出すことができるようにした。

 ドリームラボを創業した児玉直人社長は「地域の洋菓子店には、自社サイトを持っていないところも少なくありません。コロナ禍の中でも需要が堅調な中で、人材を求めるお店が少なくないはずだと考えて、また専門学校生の多くが就職活動ができず困っているという話を聞き、今回のサービスを提供する判断をしました」という。6月末時点で無料掲載に応募した会社は、6都道府県の230社、求人数も約300人に達している。実際に無料申し込みをした企業からは、「新卒のパティシエを採用することができた」との連絡が徐々に入るようになったという。

華やかなイメージとは異なる厳しい職人の世界

 そもそも、児玉さんがパティシエ専用の求人サイトを立ち上げたのは、「転職活動をする人の話を聞いていると、和食やフレンチなど他の職人さんと比較してパティシエは、途中で言葉に詰まったり、泣き出す人が圧倒的に多かった」からだ。

 子どもたちの「将来なりたい職業ランキング」でも上位に顔を出すパティシエだが、理想と現実には大きな落差があるという。

 「パティシエは職人の世界で、昔ながらに師匠がいて、弟子がいるという構造が残っています。そのため、極端にいえば、労働じゃなくて修行という認識がまかり通っている現実があります。『夢があってこの仕事に就こうとして自ら進んでこの世界に入って技術を教えてもらう立場なんだから、給料だって安いのは当然、貰えるだけでもありがたいと思え』という雰囲気です」

 もちろん、最低賃金や労働時間など法律に反していれば問題外だが、それは別として業界の特質として「修行」という慣行が残っているということだ。児玉さんは、だからこそ「きらびやかな部分、良いイメージの情報だけではなく、実際には、どのような大変さがある仕事なのかということまできちんと伝えるようにしたい」という思いなどもあってサイトを立ち上げた。そのため、求人情報だけではなく、実際に、現場にインタビューに行き、その内容もサイトに掲載している。

 また、経済成長期など、ひと昔、ふた昔前であれば、厳しい修行に堪えればいつか自分の店を持つという夢を叶えられることも少なくなかった。ところが、いまでは地域の洋菓子店でも、市場は飽和状態で、新規に出店して成功することは容易でないどころか、出店そのものが難しい状況になっている。

 労働環境、市場環境まで含めて、「パティシエの世界は厳しいけれども、それでも挑戦するという人をサポートしたい」というのが児玉さんの思いだ。

2019年5月27日に行われた合同企業説明会の様子

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