その後日テレ系列の福島中央テレビ(FCT、70年4月)、テレ朝系福島放送(KFB、81年10月)、TBS系テレビュー福島(TUY、83年12月)が相次いで開局し、クロスネットは解消されていった。
全国紙と東京キー局のクロスオーナーシップ体制が地方局の開局をめぐって争いを演じ、そこに地元紙が割って入る構図はほとんど全国に共通している。なぜか。新たに開局する地方局の系列争いは、全国紙の地方進出と地元紙の組織防衛と不可分一体だからだ。
福島県には地元紙として、『福島民報』と『福島民友』の2紙がある。両紙とも本社は福島市に置いている。良くも悪くも、新聞にとってはまず「政治(面)ありき」なのである。因みに、『民報』は毎日新聞・TBS系、『民友』は読売新聞・日テレ系との関係が深い。
関係の濃淡は、資本や宣伝・広告の投入といった「カネ」、経営陣や取締役の派遣あるいは管理職・記者の交流などの「ヒト」、記事や情報の交換、イベントの共催などで測ることができる。
「あなたにはがっかりした」
津波被害を訴える浜通りの女性
さて、その福島のメディアが県内の被災者・原発被害者同様、昨年3月11日の東日本大震災の発生以降、地震と津波、原発事故、風評被害の「四重苦」に翻弄されてきた。
先日、2度にわたり福島に取材に出かけたが、地元テレビ局のある女性アナウンサー(記者も兼ねている)が語ってくれてエピソードが、今も心に刻まれている。
彼女は昨年11月、大震災発生当初取材に協力してくれた「浜通り」在住の女性をひさしぶりに訪ねたのだが、その際こうまくしたてられたというのである。
「福島には原発だけでなく、津波による被害者もいっぱいいるのに、原発の話(報道)ばかり。原発被害者の場合、家が残っている人もいるじゃない。東電に文句も言える。だけど津波被害者は、誰にも怒りをぶつけられない。岩手や宮城よりは(福島の)津波被害は少ないのだろうが、私たちは取り残されたような気がしてならない。マスコミにはがっかりした。特に(平日のローカル報道・情報番組でキャスターを務め、県内への影響力を持っているであろう)あなたにはがっかりした」
その女性アナウンサーは、誰にも自らの本音をぶつけられない彼女の心情を理解しながらも、心が折れそうになったと言う。だからこそ「取材してくれてありがとう。でも東京でも放送してほしい」といった県民・視聴者の声を励みにしているのである。