2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年8月9日

 7月6日付Diplomatウェブサイトで、Michael Auslin米AEI日本研究部長は、海賊防止、気候変動等、中国にとって優先度の低い問題で、米中協力が出来ても、真の信頼関係に基づく米中協力を築くことは難しいだろう、と述べています。

 すなわち、中国人と話していると、「中国の周りは真空で、本来なら中国はそこで何でもできる。ところがその真空は容器の中に入っていて、その容器とは米国のことなのだ。米国が中国の自由と権利を阻害している」と考えているように感じられる。

 米国は、他国に接するに当たって基本的には、平等を心がけ、地域の安定に役立とうとする。

 中国は、他国を自分の利益のために利用しようとする面が強い。そこでは信頼とか価値観の共有がないことが特徴的である。

 中国は、米国のあらゆる動きを、中国に対して向けられたものと曲解しがちである。それは他ならぬ中国が利己的な目的を持っているからで、中国は米国もそうだろうと決めつけるのである。そうやって中国は軍備増強に励む。

 中国とは信頼関係に基づく協力関係を築くことはできないだろう。海賊防止、気候変動等、中国にとって優先度の低い問題について協力していくことは可能だが、米中関係を真の協力に基づく新たな段階に押し上げることはまだできない、と論じています。

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 中国は、1990年代以来、外資の工場を林立させ、それによって貿易黒字を稼ぎ、それを国内のインフラ建設・不動産投機で膨らませて高度成長を演出してきました。しかし現在、賃金上昇によって輸出基地としての魅力は失われました。リーマン・ショックは財政支出と金融大緩和で乗り切ったかに見えますが、それは不良債権を大量に発生させ、現在経済活動は低下しています。ユーロ危機等で世界経済が二番底になれば、中国経済はもつかどうかわかりません。そして、中国経済は、資本主義ではあっても、市場経済ではありません。つまり、共産党・政府が政策実現と幹部の出世のために採算を度外視した経営をしがちな、国営企業が経済の主流であり続けています。これらの点から、中国経済は自律的な成長を続ける力に欠けています。


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