WEDGE REPORT

2020年11月18日

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山田敏弘 (やまだ・としひろ)

国際ジャーナリスト

講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本誌などを経て、米マサチューセッツ工科大学(MIT)の客員研究員として国際情勢やサイバー安全保障の研究・取材活動に従事。近著に『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)、『サイバー戦争の今』(ベスト新書)。

 米大統領選が11月3日に行われてから、事前の予想通り、ドナルド・トランプ大統領が不正選挙だとゴネ続けている。結局のところ、一部の人たちの主張とは裏腹に、選挙結果に影響を及ぼすような不正は見つかっておらず、選挙結果が覆ることはなさそうだ。

 1月20日に第46代米国大統領として就任するのはジョー・バイデンということになる。バイデンはトランプのように強烈なキャラクターではないために、米国が少し落ち着いた雰囲気になったと感じるのは間違いないだろう。逆に言えば、バイデンはちょっと凡庸なリーダーのように見えるかもしれない。もっともそれが今、混乱極まるアメリカで今、国民がリーダーに求めていることだということである。

 筆者は今回の大統領選ではワシントンに入って取材を行なっていた。ある知人の元連邦職員は選挙後に「トランプでなければ誰でもいいから民主党のバイデンに入れた。バイデンも過去を振り返るとまあいろいろあるけど、しょうがない」と語っていた。

 実はトランプと比較されることで折り目正しいリーダーに見えるバイデンはその政治家人生を振り返るとクリーンなイメージとは異なる側面もある。そう、「いろいろ」あったのである。

 そこで、バイデンのこれまでのキャリアに見る「不都合な真実」にスポットライトを当て、その人物像に迫ってみたい。

ホワイトハウス近くのマクファーソン公園で選挙時翌日にバイデンの講演をパブリックビューイング(筆者撮影、以下同)

いつの間にか忘れられたウクライナ疑惑

 まず初めに、いつのまにか忘れられつつある、今回の選挙戦でバイデンに浮上した「疑惑」について言及しておきたい。息子ハンターによる、ウクライナと中国にまつわる話である。

 簡単に説明すると、バイデンが副大統領だった知名度などを利用し、アルコール依存症などの問題を抱えてきた息子ハンターが、ウクライナと中国の企業からお金を受け取っていたとされる。ウクライナのケースでは、ハンターが、ウクライナで汚職事件の捜査対象になったガス企業の取締役を務めていたことで、バイデンが検察に働きかけをしたとの疑惑があり、それに絡んでバイデンが同企業幹部と会談したというスキャンダルが大統領選直前に取り沙汰された。

 バイデン側は当時のスケジュールにないとして完全否定。ハンターのプライベートな電子メールのやりとりがあやしい出元から出てくるなど、話の信憑性にも疑問符がつけられたこともあって、この話はあっけなく収束したのである。

 中国のケースでは、中国国有企業の支援を受けた企業の取締役を務めていて、そこからのカネがバイデンにも流れたと指摘された。証拠は出てなかったため、結局大した話にはならなかったが、ハンターは大統領選前にその企業の取締役を辞めている。

 息子のハンターは、個人的にもアルコールや薬物依存の問題を抱えており、足元をすくわれかねない動きも少なくなかったために、バイデンを貶めるための格好の標的とされてきた。「バイデンとハンターがビジネスがらみの話をお互いにしない」というのはこれまでもあちこちで報じられてきた事実であったからか。今回の疑惑もバイデンとのつながりは薄く、選挙戦を崩壊させることはなかった。

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