2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年8月30日

 カナダ石油を米国に引き込むパイプライン計画が米国国内事情で頓挫したのを尻目に、国営の中国海洋石油(CNOOC)が、カナダの巨大エネルギー企業であるネクセン社買収を決定したことに関して、7月24日付WSJ社説が、米国政府の石油政策を批判しています。

 すなわち、CNOOCによるネクセン社の買収という動きを許した直接のきっかけは、オバマ大統領がカナダから米国に石油を導入するパイプライン(Keystone XL)計画を葬ったことであり、環境保護派の抵抗に屈したこの決断が、カナダにとっては屈辱となった点にある。カナダのハーパー首相はすかさず「輸出市場を多角化する」必要に言及し、パイプラインを伸ばすならそれは太平洋岸に向けてであると示唆した。

 現在、米国下院には、ブッシュ時代の合意を復活させ、沖合油井の掘削を許そうとする法案がかかっているが、通過の暁には、オバマ政権は拒否権を使って阻止する意向を示した。オバマ政権は、アラスカであれどこであれ、環境保護勢力の反対を斟酌して石油やガスを採りにくくさせる一方、モノにならない再生可能エネルギー計画に、何十億ドルにものぼる資金を無駄にした。

 カナダには、サウジアラビア、ベネズエラに次ぐ石油埋蔵量がある。低廉な石油を、パイプラインで引き込みさえすれば、米国はその分潤うはずだが、カナダの石油が環境に害を与える恐れのあるオイルサンドから取り出すものとなるのをとらえ、米国の環境保護派は異議を唱える。おかげでパイプライン計画が棚上げとなった。

 しかし、米国環境保護派の意向や心配などと関係なく、いずれにせよカナダのオイルサンドは開発される。そして、その買い手は、中国やその他アジア諸国となることが今回の一件でわかった。事態はこのように推移するだろうという簡単な道理を、なぜ一部の米国人は容易に理解できないのか、と論じています。

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 今や「米国発のシェールガス革命」は、すっかり有名なものとなりましたが、北米には非在来型の化石燃料が豊富に埋蔵しており、そのカテゴリーに入るカナダのオイルサンドやシェールオイルも大いに有望なエネルギー資源です。隣国カナダからそうした安い石油を取り込むことさえできない米国、特に民主党の政策を嘆いたのが、この論説です。


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