中東を読み解く

2020年12月26日

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 トランプ米大統領は12月23日、イラク・バグダッドの米大使館周辺がロケット弾攻撃を受けたことに対し、「1人でも米市民が殺害されれば、その責任をイランに負わせる。このことを考えろ」とツイート、イラク民兵を支配するイランに強く警告した。イランの英雄ソレイマニ将軍が米ドローンで暗殺された1周年(1月3日)を前に、両国の軍事的な緊張が再び高まりを見せてきた。

7月、米空母と同じ大きさの偽装船を作って演習を行ったイラン革命防衛隊(Sepahnews/AP/AFLO)

B52、潜水艦もペルシャ湾に

 イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官が暗殺された後、イランは弾道ミサイルで米軍のイラク駐屯地に報復攻撃、戦争の瀬戸際まで緊張が高まった。だが、その後、双方が自制し、小康状態となっていた。その状況を変えたのが11月末に発生したイランの核科学者モフセン・ファクリザデ氏の暗殺事件だった。イスラエルの情報機関モサドの作戦という見方が強い。

 イラン側はファクリザデ氏が暗殺されてもイスラエルなどへの報復を思いとどまった。その理由は、核合意から離脱し、イランに厳しい制裁を加えてきたトランプ大統領が再選に失敗したことを受け、次期大統領のバイデン氏との交渉に支障が出ないよう、これ以上対米関係が悪化するのを避けたからだ。イランの穏健派ロウハニ政権の目標は制裁を解除させて石油輸出を再開し、どん底の経済から復興することだ。

 元々、ロウハニ政権はトランプ大統領の挑発には乗らず、ひたすら我慢してバイデン政権の登場を待つという戦略を早くから取ってきた。最高指導者のハメネイ師もこうしたロウハニ大統領の方針を支持。「制裁が解除されれば、イランは核合意を順守する。そうするのに1時間も躊躇すべきではない」と言明、これを受けたロウハニ大統領も「バイデン政権が核合意に復帰するのは疑いない」とバイデン氏に秋波を送った。

 バイデン氏はこれまで、核合意復帰に前向きな姿勢を示してきたが、合意を「史上最悪」と非難し続けてきたトランプ大統領にとって、自分の“一丁目一番地”の政策が反故にされるのは我慢がならない。このため、大統領はバイデン氏がイランとの復帰交渉ができないよう「両国関係を極度に悪化させたい」(アナリスト)というのが本音だとされる。

 大統領が先月、イランの核施設を攻撃するための案を出すよう国防総省に要求し、メドウズ首席補佐官やミリー統合参謀本部議長らが大規模戦争に発展しかねないと止めたと伝えられている。こうした中で、20日、バグダッドの米大使館周辺に「21発のロケット弾が撃ち込まれた」(米中央軍発表)。攻撃では、米側に死傷者はなかったが、イラク市民1人が死亡、数人が負傷した。

 大統領はツイッターで、この攻撃の背後にはイランがいると非難し、米国人が犠牲になった場合、イランに報復することを強く匂わせた。中央軍は「イラン支援のならず者民兵の犯行」と断じている。11月にも大使館周辺がロケット弾の攻撃を受け、子供らが死傷した。

 トランプ政権は来年1月3日のソレイマニ司令官の暗殺1周年に向けて、イランやイラン支援の民兵らの攻撃が活発化すると見て、今月初め、B52戦略爆撃機2機や戦闘機飛行中隊をサウジアラビアなどペルシャ湾の基地に派遣、巡航ミサイル「トマホーク」154発搭載のオハイオ級潜水艦「ジョージア」も急派した。空母ニミッツはすでにペルシャ湾海域に遊よく中で、緊張の度合いが高まっている。

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