WEDGE REPORT

2020年11月21日

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 トランプ陣営の選挙訴訟を指揮するジュリアーニ元ニューヨーク市長らは19日の記者会見で、選挙がベネズエラやキューバなどの共産主義者からの資金に大きく影響されたなどと途方もない陰謀論を展開、真の勝利者がトランプ氏であるとアピールした。各州で選挙結果確定の期限が迫る中、当てにしていた不正選挙の訴えが相次いで退けられ、陣営の主張は一段と現実離れしてきた。

(REUTERS/AFLO)

バイデン勝利用に操作された投票システム

 ジュリアーニ氏は「バイデン前副大統領は選挙前、世界で最も優秀な投票の不正チームがいる、と言っていた」「投票システム“ドミニオン”はベネズエラの故チャベス大統領の指示で製造された」「トランプ大統領は民主党の陰謀の犠牲者。国民から選挙が盗まれることは許さない」などと証拠のないトランプ勝利論をぶち続けた。

 ジュリアーニ氏とともに会見した訴訟団の1人で、トランプ氏の弁護士でもあるシドニー・パウエル氏も、各州で導入された投票システムとチャベス氏が設立したとされる会社を関連付け、システムはバイデン票が増えるよう仕組まれていたと一方的に主張。「毎日明らかになるのはベネズエラやキューバ、恐らくは中国からの共産主義者の資金が選挙に多大な影響を与えたということだ」と指摘した。

 しかも、ワシントン・ポストによると、同氏は(トランプ氏が勝っていた事実を記録した)サーバーがドイツで押収されたのかという質問に対し「その通りだ。このシステムの不正に何か関連している」とまで言明した。極右のケーブルテレビ「ワン・アメリカ・ニュース」は選挙後、フランクフルト駐留の米軍がコンピューターのサーバーを押収したところ、トランプ氏が大統領選挙人410人(バイデン氏128人)を獲得して圧勝していた“真実”が記録されていたと伝えている。

 信じ難い陰謀論の類だが、極右の根も葉もない言い分を正式な大統領の代理人が堂々と認めるなど通常はあり得ないことだろう。しかも外国の介入についてはトランプ氏自身が否定しており、この点も矛盾している。さらに言えば、この投票システムはトランプ氏が負けた州だけではなく、勝利した南部フロリダ州や西部ユタ州でも使われており、主張にまるで一貫性がない。

 しかし、トランプ氏はこうした異様とも言えるジュリアーニ氏らの言動を評価し、ホワイトハウスの法律顧問らがトランプ氏の勝利に否定的なことを言うのにうんざりしているされる。もっともジュリアーニ氏には、大統領に敗北を認めさせず、選挙結果の判明をできる限り延ばして顧問料をせしめる金儲けのため、という黒いうわさがつきない。米メディアは同氏が最近、1日2万ドル(約210万円)という莫大な顧問料を請求したと伝えている。

“居座り”の新たな道

 トランプ氏は敗訴続きの裁判闘争を断念し、別の抜け道を探っているという見方も急速に強まっている。ワシントン・ポストなどによると、同氏はあくまでも不正選挙を主張してバイデン氏に負けた一般投票による選挙結果を無視、その一方で激戦州の共和党多数派の州議会に「自分を支持する大統領選挙人を指名させる」という戦略に転換しようと図っているという。

 その狙いはまずは中西部ミシガン州(選挙人16)だ。トランプ大統領は20日、同州の共和党議員をホワイトハウスに招き、会談する計画だ。州議会で選挙人を指名する方途などについて協議すると見られている。同州の大票田デトロイトを含むウエイン選挙区の開票では、票を確認する同選挙区の点検委員会の共和党委員2人がいったんはバイデン氏優位の結果を認めたものの、その後撤回し、なお混乱が続いている。

 大統領を正式に選出する大統領選挙人16人はバイデン氏がトランプ氏に約15万8000票の大差を付けて勝ったため、勝者総取り方式ですべてバイデン氏が獲得することになるが、トランプ氏は不正があったとして州議会で選挙人を選ぶよう州議員を説得するのではないかと見られている。

 しかし、不正の決定的な証拠がない中で、一般投票による国民の意思を無視するやり方については「民主主義を破壊するもの」という厳しい批判がある上、仮に州議会が新たな選挙人を選出したとしても、最終的な決定は州知事にあるとするのが法律専門家の一般的な見解。州知事は民主党であるため、トランプ氏の戦略が成功する見通しは薄いと見られている。

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