米大統領選は投票日の3日から開票が始まり、再選を目指すトランプ大統領と民主党のバイデン前副大統領が激戦を演じた。トランプ氏はホワイトハウスで「われわれが勝った」と一方的に宣言したが、4日になってバイデン氏が大接戦の中西部ウィスコンシン、ミシガン両州を逆転で制し、当選の道筋が見えてきた。トランプ氏は再集計を要求する見通し。同氏は選挙に不正があるとして法廷闘争に持ち込む考えを明言、懸念されていた泥沼化の恐れが深まっている。
バイデン氏、猛追の逆転劇
各州の発表やメディアの報道などによると、4日夕までの選挙人獲得状況はバイデン氏が253人、トランプ氏が214人。未確定選挙人数は71人。決まっていないのは激戦州の東部ペンシルベニア(選挙人20)、南部ジョージア(同16)、ノースカロライナ(同15)、西部アリゾナ(同11)、ネバダ(同6)、アラスカ(3)の6州。
このうちジョージア、ノースカロライナ、アラスカはトランプ氏がリード。アラスカはトランプ氏が勝つ見通しだが、ジョージアとノースカロライナは民主党支持者が多い郵便投票分が残っており、なお先行きは不透明だ。
アリゾナとネバダはバイデン氏の勝利が濃厚と見られている。アリゾナは共和党の地盤で、前回もクリントン氏がトランプ氏に敗北した州だが、今回はバイデン氏に分がある。トランプ氏が勝つには残票の3分の2を獲得する必要があるが、残票は民主党支持者が多いとされる。ネバダ州は3日の投票日以降に到着した郵便投票分の開票結果は5日まで発表しない方針を明らかにし、これが勝敗に微妙に影響するかもしれない。
勝負の行方はペンシルベニア、ミシガン(選挙人16)、ウィスコンシン(同10)3州に大きくかかってきたが、バイデン氏はウィスコンシン州の土壇場の開票で逆転、競り勝った。選挙報道に定評のあるAP通信が速報した。98%以上の開票段階で、バイデン氏163万389票、トランプ氏160万9879人。その差は約2万人(0.6ポイント)の僅差。
ウィスコンシン州の規則では、票差が1ポイント未満の場合は再集計を要求できることになっており、トランプ陣営は直ちに再集計を要求する方針だという。前回はトランプ氏がヒラリー・クリントン氏を1万704票(0.3%)の差で破った。
ウィスコンシンに続き、ミシガンでもバイデン氏が開票の最終盤で逆転した。開票97%段階で、バイデン氏がトランプ氏を1.2ポイント、リードしており、やはりAP通信が速報した。未開票分はデトロイトを含む民主党の地盤の地域が含まれており、バイデン氏の優位は動かないものと見られている。
ペンシルベニアでは開票率82%段階で、トランプ氏がバイデン氏を6.6ポイント上回っているが、一時は12ポイント以上(約70万票)の大差がついていただけに、バイデン氏の猛追ぶりが顕著になっている。同州でも残票はバイデン支持票が多く、さらに票差が縮まると予想されている。
今回、これら激戦州でバイデン氏が開票当初で差を付けられ、後に急追してているのは、遅れて開票される郵便投票など期日前投票分が多いことが要因だ。郵便投票はバイデン氏の支持者が多いため、当初はトランプ氏が有利に見える“レッドミラージュ(赤い蜃気楼)”現象が現実に起こった格好だ。“レッド”は共和党のシンボルカラーである。
獲得選挙人300人も
理論的にはまだ両候補にチャンスが残っているが、“レッドミラージュ”現象を考慮すると、バイデン氏当選の方向性が鮮明になりつつある。バイデン陣営は依然大差があるペンシルベニアを落とす前提で勝利のシナリオを描いている。
バイデン氏がこれまで確定した大統領選挙人数は253人。これに勝利がほぼ間違いないアリゾナ(11)とネバダ(6)を加算すると、270人に達し、当選が確定する。仮に、150万もの残票のあるペンシルベニアやノースカロライナで大逆転するようなことがあれば、獲得選挙人は300人も見えてくる。
今回の選挙を現段階で総括すると、事前の世論調査で劣勢が伝えられていたトランプ大統領が前回同様、予想を上回る強さを見せつけた印象がある一方、世論調査専門の「リアル・クリア・ポリティクス」(RCP)の直前の調査と実際の開票状況を比べると、ほぼ予想通りの結果となっていることが分かる。
注目されていた南部ノースカロライナやジョージア、テキサス、中西部オハイオ、アイオワの各支持率は0.2~2ポイントの差でトランプ氏が上回っていたが、少なくとも現時点での結果はトランプ氏の勝利か、優勢という事前の予想通りとなった。バイデン氏にとっては共和党の地盤のアリゾナで勝てそうなのが大きい。トランプ氏寄りの保守系のフォックス・ニュースがバイデン勝利を一番に報じ、トランプ氏の激怒を買ったのは皮肉と言う以外にない。
しかしフロリダは、バイデン氏がRCPの調査で1ポイント弱リードしていたが、実際には負けた。バイデン氏はトランプ氏に一方的な勝利宣言をさせないためにも、同州で圧勝したいとの思惑を持っていたが、この戦略は奏功しなかった。