WEDGE REPORT

2020年11月4日

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 オーストリアの首都ウイーン中心部で11月2日夜、イスラム過激派による銃乱射テロが起きた。先月末には仏ニースでテロ事件があったばかりで、欧州は相次ぐテロの連鎖におののいている。当局は射殺された容疑者について、過激派組織「イスラム国」(IS)の信奉者としているが、その詳細は不明だ。テロを操った黒幕はいるのか、背後関係を探った。

事件現場に残された銃弾の痕(AP/AFLO)

銃をどこから入手したのか?

 事件は中心部の繁華街で夜8時過ぎ(日本時間3日午前4時)ごろに起きた。複数カ所で銃撃があったとの情報もある。メディアなどによると、現場は地元で“バミューダ・トライアングル”と呼ばれているバーやパブなどが密集している一帯。新型コロナウイルス拡大前は日本人観光客も多く訪れていたスポットだ。有名なシュテファン大聖堂やユダヤ教会も近い。

 欧州ではウイルスの新たな拡大でフランスが夜間外出禁止に踏み切るなど規制強化に乗り出している。オーストリアも感染が拡大したため、3日午前零時から飲食店の店内営業停止がスタートする矢先で、最後の夜を楽しむ市民らが多数、同地域に集まっていた。

 容疑者は自動ライフルと拳銃を乱射し、男女2人ずつの4人を殺害、約15人が重軽傷を負った。けが人のうち数人は重体で、犠牲者が増える恐れがある。容疑者は約50発の銃弾を発射したが、警官隊に射殺された。複数による犯行の可能性もある。事件の関連で十数人が逮捕されたという。クルズ首相は「間違いなくイスラム過激派のテロだ」と述べた。

 ネハンマー内相の記者会見などによると、容疑者は「過激化」し、過激派にシンパシーを抱いていたとされる。容疑者のアパートからISを信奉することを裏付けるようなビデオが見つかったという。米ニューヨーク・タイムズによると、容疑者は「ウイーン生まれの20歳の男」で、両親は北マケドニアからの移民。イスラム教徒とみられる。

 情報当局は容疑者をイスラム過激派としてマークしていたようだ。なぜなら同紙によると、オーストリアからシリアのISに合流しようとしていた約90人の中に含まれていた人物だったからだという。容疑者は昨年、シリア渡航を試みて逮捕され、一時投獄されていた。母国で過激化していく典型的な“ホームグロウン・テロ”だったのではないか。

 容疑者がISの信奉者だったとしても、犯行に踏み切った動機やタイミング、オーストリアでは容易に入手できない自動小銃などの武器をどのように手に入れたのか、資金はどこから工面したのか、多くの疑問が残る。

 単独犯にせよ、複数犯にせよ、今回の事件は周到な計画と準備なしには実行できない犯行だ。つまり、背後に支援する組織や人物がいるということだ。動機やタイミングとしては、ニースでのテロ事件など最近フランスで起きた一連のテロ事件の原因となったイスラム教の預言者「ムハンマドの風刺画問題」が影響しているとの見方が強い。

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