また、PLAの行動がほとんど上部の審査なく行われるということもありうる。その具体例が、2007年の人工衛星撃ち落とし事件であり、その時には、文民指導部は事前に報告を受けていなかったか、一部しか報告を受けていなかったのではないか、と見られている。このように、事例によっては、PLAはとてつもない影響力をもっているということが言える、と論じています。
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マティスの論評は、中国解放軍の兵器性能などのハード面ではなく、軍と政治指導部(文民)の間の意思疎通、情報・知識の報告や連絡体制というソフト面に焦点を合わせたところに新味があります。
特に、軍事についての経験、知識のない最高指導部の人たちが、PLAからの報告だけに頼るのではなく、外部からの報告を受け、総合的に的確な政策判断が下せるか、との指摘は重要です。
中国の軍事力が比較的小さく、周辺諸国とも領土・領海をめぐって問題を抱えていない状況なら、中国の政策決定過程に対し、周りの国々が特段の関心を抱く必要はないでしょう。しかし、昨今の南シナ海、東シナ海などの状況を見れば、単に「中国では、軍は党のコントロール下にある」というようなステレオタイプの公式論が説得力をもたないことは明白です。
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