豊富なメタンハイドレート資源の商業化は、エネルギーの96%を海外依存する、主要国では最も脆弱な日本経済のエネルギー体質を劇的に転換させるし、安い天然ガスがより安価なエネルギー・製品・サービス価格をもたらし、企業や消費者にとっても大きな利益となる。
さらに、製造業空洞化に悩む日本にとっては、安価なエネルギーで国内立地企業の競争力が改善する上に、高収益で雇用をもたらすエネルギー産業が日本国内で大きく育つことにもなる。中東諸国のように採掘に課税すれば財政収支の改善すら見込むことができる。
天然ガスのインフラ整備が不可欠
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もっとも、メタンハイドレートが商業化しても、日本でガス革命を起こすには天然ガスを利用促進するインフラ整備が不可欠だ。ガスパイプラインひとつをとっても、日本の敷設延長はかなり短い(図表4)。国土面積が広い米国、ロシア、中国、オーストラリアなどは別格としても、ドイツ、フランス、イギリスなどよりも短い。しかも、日本の天然ガスパイプラインはLNG基地を中心に発達しており、本格的な都市間広域整備は始まったばかりだ。
天然ガス利用促進のインフラが整備されることは、日本の既存の国内資源の利用を進める上でも極めて有効だ。その一例が、各地で計画、実施されつつある下水汚泥・畜産排泄物・有機廃棄物からガスを生成し、エネルギーや肥料などを作るバイオマスプラントだ。
有機廃棄物を利用するバイオマスプラントは、いままで単に廃棄してきた資源の有効利用ができるのみならず、資源が地産地消に向いているだけに地域経済の活性化にもつながる。どの地域にもある有機廃棄物資源でその地域に燃料、肥料などを供給して、新たな雇用や収益を生んで地域経済に貢献することになる。
そして天然ガスインフラの整備が進めば、バイオマスで発生したガスを発電用に使わずそのまま利用できることとなり、プラントの採算性がさらに向上する。そうなれば、地域経済に貢献する産業分野となるし、PFIなど民間企業を活用して地方財政の収支改善にもより大きく寄与することになる。