2024年12月19日(木)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2012年10月3日

(図表2) 原油・天然ガス価格および価格倍率の推移
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 原油の熱量当たり価格は天然ガスの同価格に比べて歴史的に割高で推移しており(図表2)、割安の天然ガスがさらに膨大に供給されることになれば、エネルギー源を天然ガスにシフトすることが国民生活にとってプラスになる。

 また、天然ガス自動車の開発普及がさらに進むようであれば、日本の自動車メーカーも軽視はできない。今後の自動車の開発分野として電気自動車や燃料電池自動車などが挙げられるが、いずれも環境に優しい車ながら高コストだ。

 日本メーカーは商用車を中心に天然ガス自動車を開発普及させてきた。しかし、安価でクリーンな天然ガス自動車の開発普及が世界的に進むようであれば、環境面だけではなく経済性や市場から見ても、現状以上に天然ガス自動車が有力な選択肢となる可能性がある。

メタンハイドレート商業化は日本版ガス革命

 さらに、日本自体にガス革命を起こす大きな可能性が近づきつつあることを見逃してはならない。日本の排他的経済水域に膨大に存在する、天然ガス資源であるメタンハイドレートだ。しかも、採掘技術の進歩などで、2018年の商業化を目指した取り組みが着実に進みつつある。

(図表3) 天然ガス埋蔵量の国別ランキング
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 今後とも天然ガス価格が割安となる可能性が強いことから言えば、採算を取るのは容易ではなく、あまりに楽観的な見通しは慎まなければならない。しかし、仮にメタンハイドレートが商業化されれば、日本は世界有数の天然ガス埋蔵量を持つ国となる。日本の排他的経済水域にあるメタンハイドレートの推定量を他国の天然ガス埋蔵量と比べると図表3のようになる。

 日本が原始埋蔵量、他国は可採埋蔵量なので日本の埋蔵量は割り引いて見なければならないが、半端な量でないことは十分にわかる。シェールガスが米国にガス革命をもたらすとすれば、日本の需要の100年分をまかなえるメタンハイドレートが日本にガス革命をもたらさない理由はない。


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