豪州国立大学講師のジョアン・ウォリスが、豪戦略政策研究所のサイトに8月30日付で、「我々の裏庭に竜:南太平洋における中国の増大するプレゼンスの戦略的影響」と題する論説を掲載し、中国の南太平洋進出が豪の利益と衝突する可能性に警鐘を鳴らすとともに、この問題に豪が取り組む必要がある、と論じています。
すなわち、クリントン国務長官は太平洋島嶼国フォーラムに参加したが、南太平洋は戦略的に重要だ。豪の隣接地域への中国の進出は豪州にとり重要な意味を持つ。
中国は約40年、南太平洋で台湾と「承認」争いをしてきた。これは今休戦状態だが、今や中国はこの地域への影響力を通じ、グローバルにパワーを投射する能力を誇示することにも利益を見出している。
中国の南太平洋進出は、フィジーでの2006年クーデタと、それによって出来た軍事政権を孤立させるとの豪とニュージーランドの政策で勢いをつけた。フィジーはルック・ノース政策を採用し、中国に近づき、太平洋島嶼国フォーラムではなく、豪とNZがいないメラネシア・グループを重視した。中国はそのグループの事務局創設などを支援してきた。
中国の南太平洋での最重要な戦略的利益は軍事的なアクセスの確保、特に、シギント(信号情報収集)だ。そのほかに、地域の港湾等へのアクセスも追求している。
中国の軍事的なプレゼンスは豪にリスクをもたらす。例えば2006年のトンガやソロモン諸島での暴動の際のように、中国人コミュニティが脅威を受けた際に中国は軍事的な対応を取る可能性がある。それは、豪との対峙につながりかねない。
最も深刻なリスクは、豪の隣国が豪とは異なる利益を有する国に忠誠心を抱くことである。2009年の国防白書は、インドネシアや南太平洋諸国が豪州の脅威にならず、軍事強国が地域で軍事基地にアクセスを持たないことが豪の戦略的利益に資するとしている。しかし、中国の進出は、豪国防白書が懸念するようなシナリオが出来する可能性を排除しない。強国が地域で足場を持つことに対する豪の脆弱性は、第2次大戦中の日本の進出でも明らかだ。