2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年11月5日

 9月25日付米Wall Street Journal紙は、「中国ナショナリズムの怒り」と題する社説を掲載し、中国で暴徒化した反日デモへの驚きを表明するとともに、中国のナショナリズムを過小評価することは間違いであり、台頭する非民主主義国は世界秩序を不安定化させるので、米国は中国の侵略には毅然とした態度を堅持する必要がある、と論じています。

 すなわち、中国の諸都市で、日本企業を襲撃した人々を理解するのは難しい。デモ参加者たちは日本の壊滅を呼びかけていたが、何のためなのか。

 現在の騒ぎは、米国が1972年の沖縄返還の際に日本に返還した尖閣諸島の釣魚島に関するものである。訪中したパネッタ国防長官も、米国の日本への軍事的支援について、中国から抗議を受けた。

 中国での大規模反日デモは、2005年以来であるが、当時も今も北京政府がどこまで関与しているのか、はっきりしない。メディアは最初憎しみを煽り、その後鎮静化しようとし、警察もデモ隊を放任した後、帰宅させている。

 この二重のやり方は、北京の典型的態度を示す。中国共産党は、その正統性を、日本の侵略者を追い出し、中国を世界で格たる地位につけたことに置いており、反日感情を維持していくことに利益を見出す。一方、対日の怒りが政府に向かわないように、ある程度コントロールしなければならない。

 他方、日本のナショナリストは、過去の戦争の遺産の取り扱いを難しくしている。石原都知事が尖閣諸島を民間の所有者から購入しようとしたが、都知事が騒動を起こしかねないので、中央政府が購入をした。野田総理は、中国との摩擦を最小化するために責任ある行動を取ったが、中国はそれを挑発と捉えた。中国は自分の立場を守るために外交上の抗議をする必要はあっただろう。しかし、中国はそれを越え、監視船や漁船を送って、軍事衝突の危険を増やした。

 これは、中国が、悪い経済ニュースや政治的な困惑から国民の目をそらそうとしていることを示唆するが、それでも中国のナショナリズムを過小評価したり、中国共産党の行動を単にシニカルなものと見たりするのは間違いであろう。

 これまでのところ、中国はソ連のように国際的な現状をひっくり返そうとはしていない。しかし、台頭する非民主的強国は、特にナショナリズムが主導する場合には、世界秩序をしばしば不安定にする。中国の指導者が、コストなしにナショナリズムの怒りを発散し得ると考えないように、米国は、中国の隣人への侵略に反対して、しっかりとした態度を取る必要がある、と述べています。

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 この社説は、尖閣国有化を、石原都知事が起こしかねない騒ぎへの予防的措置であり、野田総理は責任ある対応をしているとして、日本政府のやり方を是認しています。


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