WEDGE REPORT

2021年7月12日

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(USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 この人の活躍も見逃してはいけない。ボストン・レッドソックスの澤村拓一投手のことだ。日本の千葉ロッテマーリンズから海外FA権を行使し昨オフ、名門球団に移籍。メジャー1年目早々から首脳陣の信頼を勝ち取るとリリーフの一角としてブルペンを支えている。

 11日(日本時間12日)は本拠地フェンウェイ・パークで行われたフィラデルフィア・フィリーズ戦に2試合連続登板。1点ビハインドの7回二死から4番手でマウンドに立つと、1番ジーン・セグラは自軍三塁手の失策で出塁させたが、慌てることなく2番J・T・リアルミュートを90マイル(約144・8キロ)の〝伝家の宝刀〟高速スプリットで空振り三振を奪った。この日で今季は35試合に登板し4勝0敗、防御率2・45の好成績を残している。

 日本ではどうしてもロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平投手の活躍ばかりクローズアップされるが、澤村の活躍もまた見事なレベルだ。アレックス・コーラ監督もこの日本人右腕について「もし彼がいなかった時のことを想像すると、本当に恐ろしくなる。つまり我々にとってヒロカズは必要不可欠で重要なピースということだ」と太鼓判を押している。まだ少々気の早い話ではあるが、地元メディアからはMLBで「ルーキー」の澤村に対し、新人王に推する声までチラホラと聞こえ始めてきているほど。それだけボストンでは日本人鉄腕リリーバーへの賞賛の嵐が止まらない状況となっている。

 一体、誰が今の澤村の姿を想像できたであろうか。つい1年前までは巨人で思うような結果が出せず苦しみ抜いていた。コロナ禍で3カ月遅れの開幕となった昨季はシーズンスタート当初から不安定な投球が目立ち、7月末に二軍降格。ファームでも課題の制球不足を克服できず、三軍行きを命じられると周囲からは「もう澤村も終わりだろう」「さすがに立ち直れないんじゃないか」などと引退危機までささやかれ、厳しい状況に追いやられていた。

 しかし、9月7日にトレードでロッテ移籍が電撃決定。環境を変えたことが好転のきっかけにつながり、勝利の方程式の一角として主に8回のマウンドを任され目覚ましい活躍を遂げたのはご存じの通りだろう。最終的にチームを2位躍進へと導き、クライマックスシリーズ進出へ多大な貢献を果たしたことで評価も大きく一変する。MLB移籍も視野に入れていた澤村に対し、レッドソックスを含めた複数のメジャーリーグ球団スカウトたちは日本のロッテで蘇生どころか以前より本領を発揮し始め、ウイニングショットの高速スプリットが精度を高めてきたことで並み居るメジャーの強打者たちにも十分に通用すると判断。水面下で争奪戦となり、澤村は自らの希望条件が合致したレッドソックスと契約を結んだ。

 しかしながら一部からはア・リーグ東地区の名門球団への入団が晴れて決まった後も「本当に通用するのか」と穿った目を向けられていたのも事実だ。かつての巨人時代には泥酔した挙句、暴力沙汰の騒動を引き起こしたことを週刊誌に報じられるなどトラブルメーカー的な存在だった〝黒歴史〟も残っている。だが、レッドソックス側はこのような外部の「邪推」や過去の「醜聞」に一切惑わされることはなかった。あくまでも自分たちがまとめ上げた澤村の詳細なスカウティングリポートのみを信じた結果、今日のMLBの世界におけるブレイキングを引き出す流れに至っている。

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