我々はどのように向き合えば良いのだろうか。7月23日の東京五輪開幕がもう目前に迫っている。しかし残念ながら盛り上がっていない。本来なら今頃は「さあ、いよいよ東京でオリンピックだ!」と各メディアを中心に煽り記事の掲載や五輪関連テレビ番組の放映で世の中は大フィーバーになっていたはずだ。ところが、こうしたトーンで報じられる内容は現実として限りなく少ない。
理由は明白だ。言うまでもなく新型コロナウイルス感染症の第5波到来が多くの有識者や専門家から危惧され、国民からも大会開催に反対する声は後を絶たないからである。この流れは誰が何と言おうとも紛れもない事実であり、目をつぶって無視してはいけない。
そして早くも不安が現実へ少しずつ近づこうとしている。2人の感染者を出したウガンダ代表に続き、3日には羽田空港に到着したセルビア代表選手団5人のうち、30代の選手1人が空港での検査で新型コロナウイルス陽性と確認された。来日した選手団の感染が確認されたのは国・地域別で今回が2例目となり、大きな衝撃が広がっている。
空港検疫では五輪選手だけでなく海外から日本に入国した人は抗原検査が義務付けられている。しかしPCR検査よりも精度が低いとされていることから医療関係者や専門家の間から水際対策の甘さも再三に渡って指摘されており、どうしても不安を拭い去ることはできない。
実際、先月19日に成田空港に到着したウガンダ選手団は9人全員がワクチン接種済みで陰性証明書を持っていたが、そのうち1人が陽性判定を受けて隔離。残りの8人は濃厚接触者が特定されないまま国内移動してしまい、大阪の合宿地到着後にPCR検査を受けて新たに1人の陽性が判明している。
日本の水際対策は〝ザル〟なんじゃないのか――。これではそのようにツッコミを入れられても仕方がないし、まともな考えを持つ人ならば至極当然のように抱く疑念だろう。
しかも海外在住の一般観客受け入れは断念したとはいえ、東京五輪には選手約1万5000人を含め約9万人が海外から来日する見通しとなっている。これだけの数の来日選手や関係者を漏れなく完ぺきにチェックするのは正直に言って至難の業だ。ましてや日本は現段階でも、ウガンダの事例によって〝すり抜け〟が明るみに出てしまっている。
だが人々の不安をヨソに東京五輪の開幕は秒読み段階となり、いよいよカウントダウンが始まった。何だかんだと言われ続けながら、もう日本政府とIOC(国際オリンピック委員会)、東京都、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会、JOC(日本オリンピック委員会)によって東京五輪は開催へ向け「賽は投げられた」のである。
五輪本戦の取材を行う上で大会前、複数の競技の代表選手たちに直接話を聞く機会に恵まれた。そのうちチーム競技で今度の東京五輪に参加する1人の代表選手は現在の心境について「楽しみが3分の1、残る3分の2は怖さ」と本音を吐露し、こう打ち明けている。