消化不良の結末となった。総合格闘技イベント「RIZIN.29」が27日に丸善インテックアリーナ大阪で行われ、注目の「RIZIN KICKワンナイトトーナメント」は白鳥大珠(TEAM TEPPEN)の優勝で幕を閉じた。この4人参加によるトーナメントの実現を提唱した皇治(TEAM ONE)は決勝進出を果たしたものの、白鳥の前に判定負け。最悪だったのは〝疑惑のバッティング〟など反則スレスレの行為を乱発させた末の玉砕だった。
いまさら説明するまでもないが、皇治はかつてK―1を主戦場に活躍し「ISKA K―1ルール世界ライト級王者」に輝くなど確固たる地位を築いてきた人気のキックボクサー。2020年7月にRIZINへ電撃参戦を発表して以降、キックボクシングルールで神童・那須川天心(2020年7月「RIZIN.24」)、スタンディングバウト特別ルールで総合格闘家・五味隆典(同年9月「RIZIN.26」)と対戦し、いずれも判定負けを喫している。だがキックボクサーとしての実力よりも、近年はどちらかと言えばビッグマウスなど破天荒な言動で注目を集めてきた。
那須川や五味を対戦前からとにかくコキ下ろしてディスりまくり、リスペクトのかけらも見せずに挑発を繰り返していたのも、いわば皇治の〝常套手段〟だ。この自ら提唱したトーナメントの参加前にも「アンチのみんな、いつもありがとう」と自らに批判的な周囲をあざ笑うかのような言葉を向け、堂々の優勝宣言も口にしていた。「キック界のドン・ファン」との異名を持つことも、こうした奔放な一面が大きく影響している。
しかしながら、この日のトーナメントで皇治はそんな持ち前の破天荒さをあろうことか試合中に出してしまった。前記したように〝疑惑のバッティング〟をこのようなビッグマッチで終わってみれば、実に計3度も繰り返してしまったのだから開いた口が塞がらない。
まず1回戦で皇治は元ラジャダムナンスタジアム認定ライト級王者の梅野源治(PHOENIX)と対戦。ファンも注目の対決だったが43秒が経過したところで、あまりにも呆気なく試合は早々に止められてしまった。ゴングが鳴ると同時に皇治は左右パンチの連打で圧力をかけながら前へ出たものの、下から詰めて入る攻撃によって自らの頭部が梅野の顔面を直撃。すぐにドクターチェックが行われたが、梅野は負傷し試合継続は不可能と判断されたため「偶発のバッティング」によりノーコンテスト裁定が下された。その試合後、梅野は救急搬送となった。
協議の結果、皇治の決勝進出が決定。初戦を突破した白鳥と優勝を争うことになったが、この時点で「?」が漂ったファンはかなり多いはずであろう。梅野の顔面を直撃した皇治のバッティングが「偶発」とジャッジされたことに疑問符を投げかける声も少なくなかった。何ともスッキリしない結末にもかかわらず、いくら形の上ではノーコンテストとはいえ、バッティングを放つ格好となった側の皇治が決勝へ上り詰めてしまう協議結果にはネット上でも批判的なコメントが大勢を占めていた。
このような不測の事態が起こり得ることも想定し、主催者側はあらかじめリザーバーの選手を用意しておく必要性があったのではないだろうか。しかもその皇治はコマを進めた決勝戦でも白鳥を相手に、さらに疑惑を深めるバッティングやグレーゾーンの反則行為を〝乱発〟。いくら意図的ではないにせよ、トーナメントだけでなくRIZINの大会権威そのものを結果的に著しく失墜させかねない行為で大いに株を下げてしまった。
7歳年下の白鳥に1ラウンドから防戦一方だった。序盤には皇治の頭部が白鳥の顔面に当たり、この日〝2度目〟のバッティング。それでもペースを乱さない白鳥から中盤には強烈な右フックを食らい、ダウン。ここで焦りが生じたのか。終盤には自ら放ったローキックが白鳥の下腹部を直撃し「ローブロー」。しかし白鳥優勢の流れは変わることはなかった。
2ラウンド以降も白鳥に押し込まれる。3ラウンドに入るとやや攻め込むシーンもあったが、終盤で〝3度目〟のバッティング、そして後頭部への攻撃も入れてしまい、皇治には警告が与えられた。
判定となった結果は当然のように3―0で白鳥の圧勝。顔面を腫らしたまま試合後の会見に応じた敗者の皇治はいつものビッグマウスを封印し、1回戦で負傷させてしまった梅野や他のトーナメント出場選手に謝罪の弁を述べた。「偶発のバッティング」については「技術不足」であることを強調していたものの1回戦のみならず決勝戦でも繰り返したことを考えれば、どうしても素直には受け取れない。本当に反省し謝罪しているのかとツッコミを入れたくなるのは当然のことであり、いくら謙虚な姿勢を見せても胡散臭く思えてしまう。