27都道府県と220の企業・団体が参加し、日本酒、牛肉、チーズやドレッシングなどを、現地のバイヤーや一般市民にアピールした。主催者によると、総来場者数は5096人。海外で開催される日本食見本市では過去最大級の規模だ。バイヤーはシンガポールだけでなく、マレーシアやベトナムなどの周辺国からも集まった。
出展者の声を聞いてみた。
「北海道を旅行したことがあるバイヤーから商談を持ちかけられました。しかし、うちはこれからディストリビューター(輸出先国の代理店)を探すところですと伝えたところ、残念そうに立ち去って行った。折角のチャンスを逃しました」
北海道小樽市から来たある食品加工メーカーの担当者は、良いと思ったらその場でアグレッシブに商談を持ちかけるバイヤーに驚いた様子だった。
出展した企業のなかには、数カ国への輸出実績もあり、バイヤーと10件以上の商談をまとめたところもある一方で、先に紹介したように商機をうまくとらえられない企業や、担当者が長時間不在にするブース、バイヤーに声をなかなかかけられない担当者もみられた。取り組む姿勢にははっきりとした差があるようだ。
シンガポールは国策として、国際的な商談会や会議を誘致する「コンベンション都市」を目指している。「Oishii Japan 2012」を支援するシンガポール政府観光局のスー・シュウ・キョン北アジア局長が「英語が通じる環境や、広い会議場など、世界各地のバイヤーが商談を行うためのインフラが整っている」と強調する通り、10年の国際コンベンション開催件数は725件と、世界第3位だ。
偽物に駆逐されている本物
日本食ブームに沸くシンガポールだが、一皮むけば、厳しい現実が見えた。
シンガポール小売市場の約8割を占める地場系の一般市民向けスーパーでは、偽物の日本食材が本物に混じって売られている。公営住宅が軒を連ねるアン・モ・キオ駅近くのスーパーで販売されいる日本産の商品は味噌やじゃがいもなどわずか5品しかなかった。逆に「とくせんふじリンゴ」と日本語で表記されているが、実は中国産という商品が果物売り場を占領していた。
地元の老人は小誌記者に対して「お兄さん、あんたは日本人か? このりんごは日本産なのか?」と質問してきたが、「違う」と返答すると「なんだ、じゃあ買わない」と言ってその場を立ち去った。日本産は質が良くて美味しいというブランドは確実に浸透しているが、パッケージだけで簡単に模倣できてしまうようだ。