2024年12月4日(水)

Wedge REPORT

2012年11月21日

高級スーパーでは豪州産なのに「WAGYU(和牛)」と表記された牛肉が販売されていた

 日本人駐在員や現地の富裕層が通う高級スーパーにしても、牛肉コーナーに陳列されているパックには「和牛」とシールが貼ってあるが、実はオーストラリア産。日本産は目立っていない。日本食材が浸透しているはずの場所でも、外国産が侵食している現実を見せ付けられた。

 日本食の飲食店が増えても、それが必ずしも日本食材の使用に繋がらない現象も起きている。

 3年前からシンガポールに進出した、日本食レストラン『酢重正之』の店長藤野貴祥さんが解説する。

 「日本食というと、まずは寿司・天ぷら、そして、カリフォルニア巻のような『なんちゃって日本食』が広まっています。日本の食材を全く使わなくても、これらの日本料理はできてしまいます。

日本食レストラン『酢重正之』の日本人スタッフと現地スタッフ

 我々も現地の食材は使いますが、日本から仕入れたこだわりの味噌や米、牛肉なども提供しています。素材の良さをいかし『これが本当の日本食だ』ということを地道に訴えていくことで、日本食材の良さを分かってもらうつもりです」

 醤油や味噌といった調味料さえあれば、食材が日本産であれ現地のものであれ、日本食は誰にでもつくることができる。一部の富裕層や、日本への旅行経験のあるシンガポール人ならば、高品質な食材を使った日本食を求めるのだろう。しかし、その他大勢の国民は「数あるエスニックフードの一つとして日本食を見ており、本当の日本料理に味が近いかどうかより、他国の料理と違いさえすればよい」(現地商社関係者)というのが現状という。

 日本食材の浸透に必要なことはなにか、次ページ以降で検討する。


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