2024年4月26日(金)

喧嘩の作法

2012年12月12日

なかなか守れない
指揮統一の原則

 戦いに勝つには、指揮統一の原則を守らなければならない。エキスパートである一人の指揮官に指揮を統一し、まかせるのである。指揮官が複数になればなるほど、方針が定まらなくなり、いい結果につながらない。こういうことは知財の戦術においても同じである。

 この問題に直面するのは、知財部が経営側や法務部などの他部門に逐一承認を求めなければいけないときだ。知財部が勝つ見通しをもっていても、経営側は負けたときのリスクを優先して考える。一般的に法務部は最も保守的かつ慎重であり、技術的な勝ち負けの見通しをたてることができないため、知財裁判には適さない。

 10年ほど前、ホンダは原告として行った中国における知財裁判の第一審で敗訴した。知財部は勝つ見通しをたてていた案件である。こうした場合、日本企業では、早急に中止すべしと判断しがちだ。経営側は敗訴が報道されるとネガティブインパクトになることや、金銭的な賠償はどうなのかというリスクを中心に考えるからだ。

 ホンダでは判断を知財部にまかせてくれた。第二審でも負けたが、上級審にあげて最終的に最高人民法院で逆転勝訴した。指揮統一の原則どおり、現場の勝つ見通しを信じたことが成果に結びついたのである。

 こうした経験を積んで身に付けたスキルのおかげもあり、ホンダはその後ほとんどの原告裁判で勝ち続け、他の国でも最高裁逆転勝訴を数度経験している。知財を武器として使うには、実戦経験を重ねるほど、うまく使えるようになることを肝に銘じておくべきであろう。

◆WEDGE2012年12月号より

 

 

 

 

 

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