冷戦の間、この取り決めはうまく機能し、米国が兵力を前方展開して地域の安定に貢献する一方、日本は国土防衛に専念することができた。
しかし冷戦終結後、世界が不確実性を増すと、日本は徐々に地域的かつ世界的にその他諸国と防衛・安保関連の協定を結び始め、中核的な日米同盟を補うようになった。近年では、防衛協力で豪州や韓国、インド、ベトナムなどと協定を結んでおり、豪州との防衛協力は日米豪の3カ国間の協力体制の一部になった。
日本は、ロシアおよび韓国と領土をめぐる論争を抱え、北朝鮮の核武装に悩まされ、周辺地域の安全保障を巡る環境が急速に変化している。特に中国の台頭は、日本における最大の懸案事項である。
70年代、80年代の日本と同様、中国の軍事支出は概ね経済の急成長に沿って増加し、急速に近代化されている。特に重点を置いているのが潜水艦、ミサイル、対衛星攻撃能力で、これらは下手をすると、日本など近隣諸国の航行の自由、貿易の自由に強い影響を及ぼしかねない。
注目を浴びた新しい空母とステルス戦闘機の開発も、中国における軍事的野心の高まりを示している。経済発展ペースに沿ってこの傾向が続くなら、地域における支配力にはなみなみならぬものが出てくるだろう。
目下の問題は、尖閣諸島(中国名・釣魚島)を巡る論争だ。日本は1895年に初めて確立した自国の主権が正当で揺るぎないことに自信を持っているが、一方の中国はこれらの島々はその前から伝統的に中国の一部だったと主張している。
双方の主張の法的根拠がどうであろうと、今後、問題解決に向けてどんな道が選ばれようと、中国が漸進的に法的主張の限界を試しているという印象から逃れるのは難しいだろう。たとえ尖閣諸島の主権を巡る論争が解決されたとしても、また別の論争が生じる可能性がある。