けれども同時に英国には、フォークランド諸島や西インド諸島の一部、さらにはインド洋や太平洋の島々を含め、遠く離れた外国領土の防衛に対する責任を負ってきた歴史的遺産がある。また、日本と同様に長年、海外からの天然資源に対する依存度を意識してきた。海洋・航空両面の軍事力保全は今も英国の優先事項だ。
アフガニスタンでの作戦に今も巻き込まれている英国だが、14年末までに軍を撤収する公約がある。近年のリビア問題への関与や、イランは言うまでもなく、シリアとイスラエル・パレスチナ問題という中東地域で続く政情不安にもかかわらず、英国は恐らく、自国から離れた場所での大規模な地上作戦にまた関与することには消極的で、海からの影響力投射を目指し、必要に応じて海上の供給ルートを守るという伝統的な海洋ベースの政策に戻るだろう。
また、中国の台頭が続く中で、英国は5カ国防衛協定(FPDA)を一層重視するようになるかもしれない。FPDAは英国、マレーシア、シンガポール、豪州、ニュージーランドによる枠組みで、現在はマレー半島の近くでの年次軍事演習に英国軍が参加することになっている。
さらに英国には今も、軍事停戦委員会の一員、ひいては日韓両国における国連軍司令部の一員として、朝鮮半島の安定に対する責務が残っている。
近年、英国軍と日本の自衛隊は数々の場面で協力してきた。01年9月のテロ後、英国は日本とともに真っ先にインド洋での給油活動に参加した国の1つであり、04年から06年にかけては、イラク国内で英国が指揮する多国籍師団(南東部)に参加した陸上自衛隊と緊密に協力した。
05年には一時、豪州軍の助けを得るまでの間、英国軍は陸自の担当地区を直接警備した。最近では、日英両国はソマリア沖・アデン湾での海賊対策で協力している。
英国の入る枠組みに日本も参加を
新たな時代の到来を考えると、英国と日本が協力する、より直接的な機会があると言っても、さほど空想的ではないだろう。韓国に拠点を置く国連軍司令部が日本に永続的な組織を配置していることを考えると、国連軍司令部の一員として日本を招き入れる時ではないだろうか?
また、日本が防衛面で豪州および英国と緊密な関係を築いたこと、マラッカ海峡経由での物資供給の確保に日本が依存していることを考えると、日本は少なくともFPDAのオブザーバーの地位を得る可能性があるのではないだろうか?