ショーゼン そうそう。これは「お父さんはふだん朝早くから働いてるけど、本当は朝はゆっくり寝ていたいんだ」っていう句。でもちょっと平凡だと思わない?
のぞみ そうですね。朝寝をしていたいお父さんの気持ちをストレートに詠んでるから、誰にでも詠めちゃいそう。
ショーゼン こういうのを「説明句」っていうんだ。5・7・5にすると川柳風になるんだけど、本当の川柳にするには、もう一ひねりほしい。ちょっと「意外性」を加えてみましょう。
本当は朝寝が好きな風見鶏
のぞみ あっ、句ががらりと変わった! 朝早くから元気に啼いているニワトリが、本当は朝寝好きだったなんて!
こだま この風見鶏は本心を言えずにつらいんじゃないかとか、作者本人じゃないかとか、想像もふくらみます。
のぞみ でも、私みたいな川柳1年生が「意外性」を出そうとすると、突飛な句になってしまいそうで心配です。
ショーゼン そうなんです。あまり、奇をてらうと、のぞみさんが心配していたように、狂句になってしまいます。狂句とは、古川柳が語呂合わせに走り、内容のウィットよりも表現のユニークさばかりを競うようになったものです。それがエスカレートして破格となり、奇をてらったようになっていった。川柳を詠むのに、ある程度の技巧は必要です。でもこればかりを気にすると、中身のない言葉遊びに終始してしまう。
そんなときは、現代川柳の基本に立ち戻ってください。それはあなた自身の「心の機微を詠むこと」ですよ。