2024年12月4日(水)

うつ病蔓延時代への処方箋

2013年3月13日

―― うつ病増大の要因をどのようにみていますか。

鳥越:間違いなく言えることは、外部要因(ストレス)の強さと受け手側の内部要因の変化です。外部要因は年々強まっています。ビジネスの世界で言えば世界との競争が激しくなり、これが職場環境での刺激を強めることにつながっている。もう一面として、ネット社会の進展があげられます。好むと好まざるとにかかわらず常に誰かとつながっている状態は、刺激を受けます。私自身も放っておけば数百通のメールが溜まってしまうことに憂鬱さを感じますから。個人的には最初は楽しかったのに今はツイッターやフェイスブックに追われるようなのが苦痛です。24時間オンオフが切り替えられない世界は、知らずに刺激を受けていると思います。

 世の中全体のムードでいけば、景気回復基調に入る方が明るい雰囲気になりますから短期的にはプラスだと思います。しかし、働き方が従来と何も変わらずいれば、仕事が忙しくなり刺激が増えてしまいますので、長期的には好ましい方向にはいかないでしょう。社会全体の明るさは大事ですが、それを経済的要因だけで判断し、メンタルヘルス面に結びつけるのは間違いではないかと思います。

――グローバル化し競争は年々激しくなるなかで、刺激が増大していくことはわかります。そのほかに社会構造の変化という面はないのでしょうか。

鳥越:バブルごろまでは、自己防衛手段が自然に身についていたと思います。上司と部下の関係はもっと近かったし、部下は気軽に上司と相談でき、飲みに行く機会も多かった。ある程度の価値観を共有でき、目標を見出せたので、刺激があっても切り捨てられた。運命共同体みたいな中で年齢とともにストレス耐性が強まっていったと思います。意識せずにメンタルタフネスを実行していたともいえます。

 それが崩れてしまったことは誰もが感じることでしょう。昔のスタイルに戻るのではなく、多様な価値観を認め合いながら、自身で自己防衛手段を講じていくことが必要です。自身の殻に閉じこもるのではありません。刺激を感じる行動パターンを変化させていくことです。


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