昨年11月放送のNHKスペシャル『大海原の決闘!クジラVSシャチ』、今年1月放送の『世界初撮影!深海の超巨大イカ』は、NHKエンタープライズ(NEP)の自然番組班が制作を担当した。「超巨大イカ」は制作に10年余りをかけ、NHK、NEPに米ディスカバリーチャンネルも参加した国際共同制作番組。長期の取材と深海撮影用の潜水艇の手配など莫大なコストを各社で分担したからこそ、世界で初めて撮影に成功した。
NEPの坂本秀昭海外販売部長は「NHK、NEPの自然番組は海外販売の主力商品です。ダイオウイカやクジラVSシャチは、放送前から海外の大手放送局から購入希望が来て競争になるほどの人気でした」と話す。
番販に加えて日本のテレビ局が強化しているのがフォーマット(企画)販売だ。なかでも最も老舗なのがTBS。ドラマ『JIN−仁−』が世界80カ国で放送されるなど番販でも実績を上げているが、それに加えて、フォーマット販売も80年代からはじめている。
『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』の面白ビデオコーナーの米国版『America’s Funniest Home Videos』は米ABCで放送23年目に入り、『SASUKE』の米国版『American Ninja Warrior』は、ラスベガスで決勝戦が行われるなど人気番組になっている。
フォーマット販売といっても、決して売り切りビジネスではない。TBSテレビコンテンツ販売事業部の杉山真喜人海外番販チーフは「フォーマット販売は売った後が大事です。細かなノウハウが沢山あって、ライセンス先と信頼関係ができてはじめて番組が成り立ちます。企画だけあっても番組としては成立しません」と話す。
アニメも日本が誇るコンテンツの柱だ。輸出額でみると、2000年代のピークからは落ちたものの根強い人気は続いている。テレビ朝日の上田直人国際ビジネス開発部長によれば「『ドラえもん』などのコンテンツは、エバーグリーンと呼ばれています」。つまり、流行り廃りではなく、継続して人気があるコンテンツだということだ。加えて『忍者ハットリくん』がインドで、『クレヨンしんちゃん』がスペインで突如として人気が出るなど「需要の掘り起こしはまだまだできる」という。
海外への販売拡大の余地が大きいなかで最大のネックとして残るのが権利処理の問題。例えば、NEPの楢島文男海外販売特別主幹は「VOD(ビデオ・オン・デマンド)権が渡せないことが辛い」と話す。
海外の放送局は放送とネットのVODをセットで要望することが急増しているという。提供するためには新たに権利処理をするか、作り直す必要があるが、多大な手間とコストがかかり、採算がとれない。海外放送局のサービス形態が拡大する中で、制作、販売側の対応が追いつかないのが現状である。こうした課題をクリアするにはどうすれば良いのか。雑誌では次章で検討する。
[特集] 日本のソフトパワーは健在か?
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WEDGE4月号特集
『クールジャパン「2.0」へ テレビ局の取り組み コンテンツはもっと世界で売れる』
◎アジア席巻!韓国ドラマ 国策だけじゃない強さの秘訣
◎逆襲かける日本のテレビ局(本記事)
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