話し手・鈴木江理子
聞き手/構成・編集部 鈴木賢太郎
編集部(以下、──) リーマン・ショックに続き、新型コロナウイルスの感染拡大という「危機」が日本を襲い、外国人労働者の立場が再び揺らいだ。今回の危機から学べることは何か。
鈴木 コロナ禍以前、メディアなどでは「外国人労働者なしでは成り立たない」といった言説がもてはやされていたが、コロナによって、労働市場における彼らの脆弱性が露呈した。
リーマンショックの時、日系南米人をはじめとする多くの外国人が仕事を失い、新たな仕事を見つけることが困難であった経験から、日本語習得の重要性が改めて認識された。その後、2019年に「日本語教育の推進に関する法律」が成立したが、諸外国のように無償あるいは低額で、権利として「公用語」である日本語を学べる公的制度は、いまだ整備されていない。
日系南米人をみても、日本での就労がかなり長期に及んでいるにもかかわらず、正規の仕事に就いている者は少なく、いまだ不安定雇用から脱却できていない。
外国人労働者が失業し、支援が必要になると、「だから外国人は困る」「生活保護の利用はけしからん」という声が大きくなる。しかし、それは外国人労働者を「弱者」にしないための取り組みを進めてこなかった日本社会の責任でもある。日本語や技能などを習得できる環境を整え、外国人が日本社会で自立した生活ができるようにすることは、建設的な受け入れ議論をするためにも、極めて重要だ。
──外国人労働者が日本社会で自立して生活していくうえで、一番大事なことは日本語の教育なのか。
鈴木 コミュニケーションのきっかけは「言葉」かもしれないが、日本語を学べばすべてが解決するわけではない。オンラインによる日本語教育も少しずつ進んでおり、日本語教室へのアクセスが難しい地方都市では有効であろう。一方で、……
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