「さまざまな経験をさせてもらった日本には感謝している。ベトナムに戻ってから社会に貢献できていると実感する日々を送っています」
2014年~17年まで日本で技能実習を経験し、現在は「オオクボベトナム」(ベトナム・ロンアン省)の工場長を務めるクアンさんは、丁寧に言葉を紡ぎながら日本への想いを語ってくれた。
途上国への技術移転による国際協力──。建前と実態の乖離が著しい技能実習制度だが、クアンさんの言葉が示すように、本来の趣旨に沿って運用している企業から、制度のあり方を再考するヒントを見出せるかもしれない。

関門海峡に面した工業団地の一角に本社を構える「大久保設備工業」(福岡県北九州市)。鉄の臭いが充満する工場内では、溶接の火花をバチバチと散らしながら、完全オーダー制の空調ダクトが製作されている。

全従業員が60人の同社では、技能実習生(以下、実習生)を含め40人近くのベトナム人が働いている。これだけ多くのベトナム人の雇用に至るまでに、どのような経緯があったのだろうか?