デザインや規制緩和はそれ自体が目的ではない。ユーザー目線に立った社会に対するビジョンが先にある。
アップル製品のデザイン性の高さにスティーブ・ジョブズの個性の表れが強調されたり、デザイン性が高まってきた韓国製品について「サムスンは大規模なデザインセンターを設置している」などと指摘されたりすることが多い。
しかし、見てくれだけではなくユーザーにとって本当に必要なものをデザインすることも大切だ。例えば、フィンランドの台所。ユーザー視点の食器乾燥棚とシステムキッチンが設計され、国外にも輸出されている。
同国の労働能率協会によると、女性が一生のうちに食器洗いにかける時間は2万9900時間。1日8時間労働として10年分に相当する時間を費やす(『フィンランドを世界一に導いた100の社会改策』公人の友社)。その時間を省くことによって、女性により豊かな人生を送ってもらおうという発想だ。
国の政策においても少子化について、本当に子どもを産む女性の立場にたった政策が進められている。支給される「母親パック」には、あかちゃんの衣類、おむつ、玩具までが入っている。また、「母親パック」の入っているボックス自体がベビーベッドにも使えるという。我々が知らないうちに新しい時代に向けた生活の見直し、政策のイノベーションが海外では起きているようにも思える。
誰のための規制緩和なのか?
3.11は今後10~20年もの長きにわたって日本列島の各地で地震災害に備えなくてはいけないことを気づかせてくれた。コンピューターやビッグデータの解析能力が向上し、寸断されても自律的なシステム連携でローカルに動くエネルギーシステムや、センサーによる自動保守などの仕組み作りが可能になっている。しかし、こうした未来の子どもたちに「ありがとう」と言われるようなシステムが検討されているようには思えない。