エコな電力供給、発送電の分離、電力体制の見直しという大きなテーマはいずれもずっと昔からメディアで報じられているように思えるが、何のためにリセットして新しいシステムが必要なのかというビジョンは曖昧になっているように見受けられる。
90年代に英国の大学院で、当時の通信放送市場の規制緩和を指揮したヒルズ教授に師事したことがある。当時英国のNTTに相当するブリティッシュ・テレコム(BT)は世界の技術から遅れており、米国のAT&Tからの買収攻勢にもさらされていた。
当時米国では一本のケーブルを広帯域化、放送も通信も行うことのできる実証実験が繰り広げられ、裏を返せば世界中が米国並みのインフラを投入すべく米国製ケーブルの展開を迫られていたともいえる。
カネがない英国の通信放送当局が取った戦略は、技術主導ではなく徹底したユーザー目線であった。参入したがっている米国大手の資本にも市内電話を可能とする電話線をもう一本引かせ、のんきに構えていたBTに危機感を与えることで、市場競争を誘導した。結果、BTも緩やかなスピードながら活性化、英国のブランドを維持したまま、安い電話市場が一挙に形成された。
民主党の仕分けは、自宅で見ていた子どもたちにも違和感のある「2位ではいけないのか」という質問に象徴されて終わった。日本ではユーザーにどういう市場を持たせたいのかというよりも、コストカットすべきか否かだけが論じられている。
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