田んぼとみかん畑に囲まれた、のどかな風景が広がる和歌山県中部の日高川町(ひだかがわちょう)。普段は静かな町が一変して大賑わいとなるのが、丹生(にう)神社の例大祭のときだ。通称「笑い祭」と呼ばれ、奇祭としても名高い。
「いつからお祭りが始まったのかは不明ですが、江戸時代・嘉永4(1851)年の『紀伊国名所図会 後編』にも、笑い祭のことが記されています。現在の形になったのは、第2次世界大戦後といわれています」と、日高川町役場まちみらい課の青木若奈さん。
元来は、旧丹生村の江川(えかわ)、山野(さんや)、松瀬(まつせ)、和佐(わさ)の4つの地区の各神社で、別々に催されていた祭礼が、神社の統合に伴って1つになった。それだけに各地区の伝統芸が見られるのも祭りの特徴だ。
祭り当日は、朝8時ごろ神社で神前式が挙行され神輿(みこし)が御旅所(おたびしょ)へと向かう。御旅所には4地区の氏子が集まり、「鬼の出会い」と呼ばれる儀式が行われる。これは丹生神社のある江川に入るときに、江川の鬼に対して他の地区の鬼が行う挨拶のような意味合いを持つという。
そして祭りの象徴ともいえるのが、顔を白く塗り、派手な衣装を着て「笑え、笑え」と呼び掛ける鈴振り。鈴振りとともに、串に刺した秋の収穫物を入れた枡(ます)を掲げた枡持ちが先導する行列に、神社の神輿、4つの地区それぞれの屋台や幟(のぼり)を掲げる男衆が続く。実に総勢500人ほどの長い列が、御旅所から神社まで約1キロの道を練り歩く。
道中、4人の少年による「四つ太鼓」などの芸能も繰り広げられる。さらに神社では、和佐の獅子舞や江川の奴(やっこ)踊り、山野の雀(すずめ)踊り、松瀬の竹馬駆など、各地区が独自の舞を奉納する。
「おすすめは鈴振りとともに、御旅所から神社までの道中を歩きながら見ることです。鈴振りと枡持ちが常に笑っているので、見ている人もつい笑ってしまい、ほのぼのとした空気に包まれます」
笑っていれば幸せに過ごせる。まさに、先人たちのそんな思いが形となった祭りなのだ。
丹生神社例大祭(笑い祭)
<開催日>10月13日
<会場>和歌山県日高川町・丹生神社(紀勢本線和佐駅からタクシー)
<問>日高川町観光協会☎0738(22)2041
http://kanko.hidakagawa.jp/miru/nyuujinnja.html
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