2024年4月19日(金)

Wedge REPORT

2013年9月26日

 写真甲子園のスタッフはOBやOG。「自分たちが出場した時の恩返しがしたい。また東川の人たちに会いたい」との思いで駆けつける。それは、彼ら彼女らが高校時代にここで一生忘れられない青春の日を過ごしたことが大きい。

 甲子園期間中の毎晩の夕食は、地元の主婦らが作った手料理。地元でとれる新鮮な野菜と、愛情たっぷりの料理だ。また、初日は地元住民の家に泊まるホームステイも行っている。ここで生まれた町の人との強い結びつきが「また来たい」との感情を育んでいく。

 フェスティバルのスタッフも写真を学ぶ大学生や専門学校生が多い。町の中心部にはホテルやレストランもないため、写真を専攻するある女子大生スタッフは「公民館に布団を敷いて2週間寝泊まりしているが、とても楽しい。また来年も来たい」と笑顔で話す。写真展会場で「私の写真を見ていって」と声をかけてきた年配の女性は、「写真甲子園で沖縄の高校を応援がてら、写真サークルの仲間と北海道まで来ちゃった」と話してくれた。

 地元のタクシー運転手は「『写真の町』宣言をしてから、町はきれいになった。観光客も増えている」と町の変化を実感する。

地道な取り組みで、真の地域活性化を

 松山、東川どちらも、俳句や写真という触媒を通して外の人と地域住民が交流して絆が生まれている。特に多感な高校生の頃であれば、甲子園で全力を尽くして戦った青春の思い出ととともに、ここで出会った人々のことは心の中に一生強く残るだろう。それが「また来たい」との思いにつながり、リピーターになるのだ。これは実行してすぐに効果が出るわけではない。東川町ですら20数年かかって「やっと軌道に載ってきた」(町役場職員)と話す。こうした地道な取り組みこそが、本当の地域活性化につながるのではないだろうか。


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