日本の農政が大きく変わろうとしている。ここにきて政府は日本の農業を支えてきた米の生産調整(減反)を廃止し、農業補助金を改革することを決めた。多少なりとも日本の農政を取材してきた者としては、減反政策が半世紀ぶりに転換する歴史的な変革を迎えているのだなということを実感させられた。その背景にあるのがTPP(環太平洋経済連携協定)交渉であるのは間違いない。
「保護から競争へ」
先鞭をつけた毎日新聞
ここ約1カ月にわたって減反廃止など一連の農業改革の報道が一気に展開されているが、ニューウオッチャーの一人として、こうした動きに先鞭をつけたのは、筆者が見る限り10月24日の毎日新聞朝刊ではなかったかと思う。この日の毎日朝刊は「減反見直し法案提出へ コメ農家を淘汰 政府・自民、来年国会で」との見出しで報じた。東京に配られる新聞では1面トップの扱いではなかったが、ニュースとしては大きい。記事は、政府・自民党が減反と農家への個別補償制度を見直すという関連法案を来年の通常国会に提出するという方向で調整に入ったことを伝えていた。記事中にもあったが「保護から競争へ」という抜本改革になるという意義付けだ。
この記事のインパクトの強さは日本経済新聞がこの日夕刊一面のトップで「コメ所得補償減額へ」と追随したことにも現れている。読売新聞も翌25日付の朝刊トップで「コメ補助金減額へ TPP備え 生産集約促す 政府・与党検討」と大きく報じた。1970年から半世紀近く続いてきた農政の大転換であり、各紙が大きな扱いをするのも当然だろう。
米どころ・地方紙の反応
一方、コメを生産している地方の新聞がどう反応しているのか調べてみた。東北のブロック紙・河北新報社が社説で11月10日、「減反廃止方針 議論の流れ疑問だらけだ」と社説で報じていたのが印象的だった。
社説では、「『結論ありき』のような速さもさることながら、議論の経緯を巡り疑問がわいてくる」と指摘。「減反廃止と現行補助金の大幅削減が先行すれば、米価の下落予想・所得減から農家が不安を募らせるのは当然だ」と主張した。
また「コメの市場開放を前提としたような議論を根拠に廃止が固まったとしたら、農家でなくともとても納得できない」とも指摘した。米どころを代表する主張なのだろう。