世界で巻き起こる日本食ブームに伴って高級日本酒の出荷が国内外で伸びている。だが、原料米である山田錦が足りず、酒造メーカーは造りたくても造れない状況に陥っている。生産数量目標のもと、原料米の生産も制限されているのがその元凶だ……。
NYで最も売れている「獺祭」社長の苦悩
出荷量の減少に悩む日本酒(清酒)業界のなかで、毎年出荷量を増やすという異次元の動きを見せる旭酒造(山口県岩国市)。今期(2013年9月期)の売上高は40億円に達する見通しで、ここ数年5割増で売上を伸ばし続けている。
同社が製造する日本酒「獺祭」は、純米酒のなかでも原料に使うコメを50%以下に精米する「純米大吟醸酒」という最高級ランクに分類される。1990年に発売以降、桜井博志社長が、自ら酒販店や飲食店に営業回りをして、徐々に知名度を上げていった。
足で稼いだ結果、今や単一ブランドとしての出荷量は全国一の規模にまでなった。国内ばかりではなく、世界18カ国にも出荷先を広げ「ニューヨークで最も売れている日本酒」とも言われている。6月、フランスのオランド大統領が訪日した際、安倍晋三首相との昼食会でも獺祭が振る舞われた。
国内外での好調な出荷を背景に、旭酒造は約25億円を投じて生産能力を14年末までに3倍に引き上げる。そんな中、思わぬ所から足を引っ張られることになった。獺祭の原料となるコメ、山田錦(「酒造好適米」と呼ばれる)が調達できなくなっているのである。
今のところは「10月に新米が入ってくるまで生産が継続できるように、大幅に生産を落としている」(桜井社長)という状況。だが、新米が入ってきたからといって問題が解決するわけではない。今期、旭酒造では4万3000俵の山田錦を発注したが、確保できたのは4万俵。来期は「8万俵欲しい」(桜井社長)。需給ギャップを改善するには、少しでも生産量を増やしてもらいたいところなのだが……。