本書は「腐ったミカン」と表現しているが、腐ったミカンの影響は連鎖する。周囲の人に悪い影響を広がるのだから、害悪以外の何物でもない。だが手口は巧妙である。
決して暴言を吐くわけではなく、「君の将来を思って」「君のため」といった言葉を頻用し、あくまでも部下のためを思っているかのようなふりをすることだ。これは、万一部下からパワハラで告発されるような事態になれば、昇進どころか、降格さらには解雇の憂き目に遭いかないので、用心しているからだろう。
なぜこうした人たちが生まれてきてしまうのか、その原因についても本書は分析する。興味深いのは、こうした人たちの中に、実は途中まで組織で有望視されていた人が含まれている点である。それがどこかでかなわずに、希望どおり進んでいる人への羨望もあって迷惑な行動をする嫌な人物に変わっていくのである。
人は変えられないことを前提に対応を
やる方に同情の余地はないが、やられる方はたまらない。厄介な人々はある種のルサンチマン(遺恨)を抱えた人が多いのも確かなようで、本書では、そうした人たちにどのように対処すればいいのか対処方針を示す。
著者の考え方を端的に要約するなら、関わりを極力避けることである。この手の人物のターゲットにならないようにして、厄介な仕事を体よく押し付けられそうになった時のために断る練習をしたり、断る技術を身につけたりする必要があると説く。
さらに本書で参考になるのは「こうした人たちを変えるのは至難の業」という指摘である。
「根気強く言い聞かせれば改心してくれるだろう」「謙譲の美徳をもってすれば反省してくれるだろう」などと期待してはいけない。(中略) すぐに捨て去るべきだ。そのうえで、どうすれば実害が少なくできるかを考えるしかない。
そのうちわかってくれるといった甘い期待は禁物で、結局のところ変えられないというのが現実である。そうした人々の背景にあるのは自己保身や喪失不安で、およそ合理的ではなく、自分は悪くないという考え方である。著者は人を変えることはできないということを認識した上で、上手に避けることの重要性を記す。