2024年8月30日(金)

BBC News

2024年8月30日

ドイツ西部の都市ゾーリンゲンの祭りで3人が刺殺された事件を受け、同国政府は29日、公共の場などでのナイフの使用規制や、難民に対する措置の強化を含む、治安対策を発表した。

今月23日に発生したゾーリンゲンの事件は、ドイツに衝撃を与えた。主要容疑者のイッサ・アル・H容疑者が、強制送還に直面していた26歳のシリア難民だと明らかになると、難民法をめぐって激しい議論が起きた。同容疑者については現在、殺人容疑と武装勢力「イスラム国(IS)」とのつながりに関して捜査が進められている。

連立政権を組む社会民主党、緑の党、自由民主党(FDP)の閣僚らはこの日、共同記者会見を開き、広範囲に及ぶとする措置を発表した。

それによると、市場やスポーツ関連などの多くの一般向けイベントおよび公共交通機関で、ナイフを禁止する。フリックナイフ(刃が開き出るタイプのナイフ)に関しては、全面禁止にするとした。

国外退去を命じられた外国人については、より迅速かつ効率的に強制送還するとした。中でも、ナイフ絡みの犯罪で禁錮刑に処された者は、速やかに国外に退去させるという。

また、イスラム主義を防ぐことを目的としたタスクフォースの提案や、容疑者特定のための顔認証の使用についても発表した。

ゾーリンゲンの事件では、ISが声明を出し、背後で関わっていたと主張。その翌日には、マスク姿の容疑者だとする映像を公開した。

難民申請者に厳しく対応

会見でナンシー・フェーザー内相は、欧州連合(EU)の他の国ですでに難民申請をしている人々について、ドイツで福祉給付金を受け取る権利を失うと説明。それらの人たちは他の国から給付金を受け取るはずだから、飢えたり路上生活を強いられたりすることはないと主張した。

今回の事件の容疑者は現在、西部デュッセルドルフで拘束されている。ブルガリアからEUに入域したため、ドイツで難民申請をしたものの受理されなかった。EUの「ダブリン規約」は難民申請について、最初の到着国でしなくてはならないと定めている。

シリア出身のこの容疑者は、昨年ブルガリアに送還されるはずだった。しかし、ドイツ報道によると、当局が発見できず、送還できなかったという。

今週、ゾーリンゲンを訪れたオラフ・ショルツ首相は、「ドイツにいられない人、いてはならない人を確実に強制送還させる」ために政府は全力を尽くすと表明した。

今回の新しい対策の発表は、東部2州での選挙の3日前というタイミングで行われた。

世論調査では、極右野党「ドイツのための選択肢(AfD)」が両州で多くの票を得る勢いとされている。テューリンゲン州では、保守派のキリスト民主同盟(CDU)を抑えて第1党になる可能性があり、ザクセン州でも両党は接戦となるとみられている。

移民排斥姿勢を鮮明にしているAfDは、どちらの州においても政権を握る可能性はほとんどない。

しかし、連邦政府で連立を組む3党はいずれも世論調査で支持率が10%を下回っているため、今回の選挙は政権与党にとって屈辱的な結果に終わる可能性がある。

(英語記事 Germany to tighten knife laws as anger grows at mass stabbing

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cy8xl4eq1x8o


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