2024年11月23日(土)

ワシントン駐在 政治部記者が見つめる“オバマの変革”

2009年5月1日

 大統領はプラハで、核軍縮と拡散防止に関する包括的な演説を行い、平和で安全な「核のない世界」の実現を目指す、と表明した。

聴衆を前にプラハで演説するオバマ大統領        (写真提供・AP Image)

 I'm not naive. This goal will not be reached quickly.... perhaps not in my lifetime. It will take patience and persistence. But now we, too, must ignore the voices who tell us that the world cannot change. We have to insist, "Yes, we can."

 (「私は無知なナイーブな人間ではありません。この目標は、すぐに達成できるものではありません。おそらく私が生きている間には・・・。忍耐強さと粘り強さが必要です。しかし今、私たちは、世界は変えられない、と言う声に耳を貸してはいけないのです。私たちは『イエス、ウィー・キャン』と断言しなければなりません」)

 これを受け、日米間で様々な動きが起きている。

 オバマ演説の直後に訪米した安倍元首相は4月15日にホワイトハウスでバイデン副大統領と会い、核廃絶方針への支持を約束する麻生首相の大統領宛て親書を手渡した。大統領は24日、麻生首相に電話し、「核軍縮・不拡散問題を非常に重視している。日本はこの分野でのリーダーであり、今後、共に取り組んでいきたい」と返した。さらに、日本側は27日、中曽根外相がオバマ大統領の方針を支持する「ゼロへの条件」と題した演説を行った。

 大統領が麻生首相に伝えた「日本がリーダー」という表現は、日本が核不拡散の分野で最も優等生である、という意味だ。具体的には、原子力の開発・利用を平和利用に限定し、核兵器に転用せず、国際原子力機関(IAEA)の基準を厳格に守る、ということで、日本に他国の“お手本”になることを求めているのだろう。 

 注目されるのは、大統領のこの核廃絶を目指す動きは、核不拡散の取り組みだけでなく、戦後の日米関係を改めて真剣に見つめ直すきっかけになる、ということだ。

 「日本は世界で唯一の被爆国です。大統領訪日の際は、そうしたことを念頭に置いてほしい」

 バイデン副大統領と会った際、安倍元首相はこう語り、今秋にも実現が取りざたされるオバマ大統領訪日の際には、被爆地である広島、長崎への訪問を検討するよう求めた。両市ともに、市長以下、市民の間で大統領の来訪を望む声が高まっている。

 副大統領はこの時、明快に返事しなかったとされる。だが、オバマ政権内に「被爆地である広島、長崎への米大統領の初訪問は、核廃絶を目指すオバマ大統領の決意を世界にアピールする格好の歴史的舞台となる」という意見や思惑があるのは確かだ。

 ただし、実現には米国なりの重要な条件がある。「謝罪訪問にしない」という点だ。


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